英語で「宜しくお願いします」をどう書けば?"ニュアンス語"を簡単に伝える英文メールの書き方
英文メールを書く場合、翻訳に困る言葉に出くわすことがある。たとえば「宜しくお願いします」「どうぞご査収ください」「お世話になっております」といった文章。これらの言葉はさまざまニュアンスで使われるために英文へ翻訳しづらい。むしろ、日本人とやり取りが多い外国人なら"Yoroshiku Onegai Shimasu"とローマ字で送ってくれたりする。
私自身もよく英文メールで苦労しているので、今回はこういった"ニュアンス語"をうまく英文メールで活用する方法を、実際にコピペで使える例文と一緒に書いてみたい。
ステップ1 "ニュアンス語"を「日本語訳」する
まず、「いつもお世話になっております」や「宜しくお願いします」といった"ニュアンス語"が翻訳しづらい理由は、日本人が「複数の意味をこめて使っている」言葉だからだ。
たとえば「宜しくお願いします」は、厳密な日本語で書くとこんな意味になりうる。
- 上記の通り、依頼を期日までに済ませて私へ返信してください
- 上記の通り、仕事を進めていきますので、もし不備があれば教えてください
- 上記の通り、質問したいことがありますので、確認して回答を送ってください
- 上記の通り、ご希望に沿った案では進められないのですが、ご容赦ください
などなど。列挙してみると共通するのは「上記の通り」である。つまり「宜しくお願いします」は「今までに書いたことを確認して指示通りにご返信ください」が厳密な《日本語の日本語訳》なのだ。このようにニュアンス語は1度「厳密な日本語に翻訳」さえすれば英訳しやすくなる。
下記に、よくある"ニュアンス語"を日本語訳してみたので、ご覧いただきたい。「こんなに細かく書かなくてもわかるだろう」といつもは端折っていた部分が明らかになるはずだ。
・いつもお世話になっております。
「こんにちは、今までの業務において助けてくださりありがとうございます」
・どうぞご査収ください
「お送りしたものを確認した上で、もし変更を希望される箇所があればご連絡ください」
・ご希望はございますでしょうか
「すでに提案したものからあなたが優先したい事項はございますか」
・いかがでしょうか
「提案した中から気に入らないものがあれば、別途記載した期日までにメールの返事をしてください」
・承知致しました
「ご依頼いただいた内容を理解し、期日までに実施すると約束いたします」
ステップ2 「ごめんなさい」を「ありがとう」に変える
次に「恐れ入りますが」といった"ごめんなさい語"を英語にしていく。日本語はとかく謙遜のために「ごめんなさい」「恐れ入りますが」を使う。しかし、英文では「ごめんなさい」は本当に誤りがあったときだけ書くのがマナー。
とはいえ、英文メールでも気遣いを込めなければぶっきらぼうなメールになる。そこで「ごめんなさい」を全て「ありがとう」にしてしまおう。たとえば「ご多用中誠に恐れ入りますが、どうぞ宜しくお願い致します」を"ごめんなさい"から"ありがとう"へ変換してみたのが、こちら。
「ご多用中誠に恐れ入りますが」→「お忙しいにもかかわらず、ご対応いただきますこと、予めお礼申し上げます」
「どうぞ宜しくお願い致します」→「今までに書いたことを確認して指示通りに戻してください」
1文にまとめると「お忙しいにもかかわらず、今までに書いたことを確認して指示通りに戻していただけますこと、予めお礼申し上げます」となる。非常に長ったらしい文章にはなったが、新卒1年目でも誤解しないような《何をしてほしいかハッキリわかる文章》にはなった。
簡単に言うと、日本語は多くの内容を省略する言語である。逆に英文はいろいろな文章を明確に記す言語だ。日本語のように直接書かれない"察すべき意味"が多く含まれる言語を「ハイコンテクスト」、逆に英語のように"書いた言葉がそのまま意味になる"言葉を「ローコンテクスト」と呼ぶ。日本語から英語に訳すときは、まず日本語を「ローコンテクスト」に変換することで英語に訳しやすい言葉遣いへ変換する必要がある。
ステップ3 丁寧さのレベルを考えながら英訳する
あとは辞書を使いながら訳していく。できれば相手によって、日本語の丁寧語のように体裁を整えたい。せっかくなので今まで挙げていった文章をすべて英訳していこう。
なお、英語では原則として丁寧な文になればなるほど、下記の特徴が出る。
(1)「助動詞の過去形=Could/Would/Might」を使う
(2)主語を人間にしない(あなたの仕事ぶりに感謝します>あなたに感謝します)
(3) 長い単語を使う(例、Understand>Get、Obtain>Get、Prefer>Like)
ちなみに Might you~はめったにお目にかかれない最上級の敬語なので、ジョークで言う以外では不要だ。太文字が元の日本語、青文字が「ローコンテクスト日本語」として、列挙してみた。
・ご多用中恐れ入りますが、宜しくお願い致します。
「お忙しいにもかかわらず、今までに書いたことを確認して指示通りに戻していただけますこと、予めお礼申し上げます」
- Your confirmation on above items is highly appreciated while understanding you are busy.
- Your support on above things is greatly appreciated while we are aware of your busy schedule.
最もフォーマルな文章。社外・社内でも可能。
- Appreciate your kind confirmation in advance!
「お忙しいにもかかわらず」を抜いた、同じ部署や親しい社外関係者などへ送るややくだけた文。
- Thank you for your support in advance!
「サポートしてくれてありがとう!」とお礼を事前に伝える最もカジュアルな文。同僚などへ使える。
・いつもお世話になっております。
「こんにちは、今までの業務において助けてくださりありがとうございます。」
- Good day. Thank you very much for your support as always.
メールであれば社内・社外問わず可能な文章。Good dayは1日中使える「こんにちは」の挨拶。
- Hello, thank you for your support all the time.
- Hello, thank you for your reply.
Helloは少しだけくだけたフォーマルな言い方。既につながりのある取引先や、社内メールで使用。 「時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます」よりも「いつもお世話になっております」に近い。 下の文は「ご返信ありがとうございます」の意味。上の使いまわしに飽きたらどうぞ。
- Hi, thanks for your support.
ビジネス英語の範囲ではくだけた言い方。同僚への「この前はありがとう!」といったニュアンスで。
・どうぞご査収ください。
「お送りしたものを確認した上で、もし変更を希望される箇所があればご連絡ください。」
- Your kind confirmation of the file is highly appreciated. Should you have any, please let us know.
顧客向けにも使える丁寧な文。「the file(ファイル)」部分を置き換えて「the items(もの)」や「the documents(書類)」「this email(このメール)」「the attached files(添付ファイル)」「the items sent(送付物)」でも可能。
- Please kindly confirm the file. If any changes are required, please let us know.
Please kindly~は「~していただけますか」とお願いする時に取引先へも使える丁寧な文章。 前例と同様に「the file(ファイル)」を置き換えて利用できる。
- Please confirm the file and if any, let us know.
上記のくだけた形。同様に「the file(ファイル)」を置き換えて利用できる。社内用。
・ご希望はございますでしょうか。
「すでに提案したものからあなたが外したいものや特に優先したい事項はございますでしょうか。」
- Would you please let us know if you have any preferences on proposed items?
フォーマルな言い方。社外向け。
- Could you tell me if you have any preferences?
社内では充分に使えるフォーマルな言い方。「既に提案したものから」を略している。
- Do you have any preferences?
くだけた言い方で「何か希望ありますか?」くらいのノリ。上司から部下へなら問題ないが、上長へのメールでは厳しい。
・いかがでしょうか。
「提案した中から気に入らないものがあれば、別途記載した期日までにメールの返事をしてください。」
- Your comments are highly appreciated if you could share us by the due date.
フォーマルな表現。顧客向けでも利用可能です。「the due date(期日)」を任意の日付にすることができます。「6th July: 7月6日」や「next monday:次の月曜日」など。
- Would you please let us know if you have any inputs by the due date?
ややフォーマルな表現。新規のお取引先~社内まで幅広く使える。
- Can you reply us by the due date if you have any?
くだけた言い方。「何かあれば期日までにいただけますか?」くらいのすっきりした英文。懇意のお取引先ならばこの程度まで大丈夫だが、できれば社内向けにしたい文章。
・承知致しました。
「ご依頼いただいた内容を理解し、期日までに実施すると約束いたします。」
- We promise to proceed the requested points by the due date.
丁寧な言い方。契約書のように堅く聞こえるかもしれない。
- Understood the points and we'll deliver it by the due date.
主語を略すなど、ややくだけた表現だが、社外でも問題ない。deliverは「届ける」というよりも「達成する」という意味。
- Got it! We'll do it by the due date.
カジュアルな物言い。「わかった、期日までにやっておきますね」くらいのニュアンス。get it(理解する)の過去形を使用。
と、列挙してみた。全般的にアメリカはイギリスよりカジュアルな傾向にあり、取引先からもGot it(わかった!)などとメールが来ることも。ただ、非ネイティブが英語を話すときは丁寧すぎる文で困ることはないので、上記ではやや丁寧よりのメール文を羅列した。
以上、恐れ入りますがどうぞ宜しくお願い致します。(米笑)
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