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トイアンナのぐだぐだ

まじめにふまじめ

「総合商社に優秀な人は来ない時代がくる」 総合商社の中の人が語る、就活への警鐘(前編)

「総合商社の中の人」とお話した。きっかけは少し編集で関わった記事「ゴールドマン・サックスを選ぶ理由が、僕には見当たらなかった」がバズり、リアクションをいただいたこと。

就活では今、商社が圧倒的に強い。商社に内定した学生が他社へ行くなんて、まずないだろう。それに対し、総合商社の中の人が逆風とも言えるコメントを残した。ぜひその理由を伺いたい、とご連絡したところご快諾をいただけた。

 

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表面上のダイバーシティに苦しむ若手

 商社にダイバーシティ多様性)が無いことはOB・OG訪問をした当時、私でもわかった。「ゲイやレズビアン等への差別防止に何をされてますか?」「主夫を養いつつ海外転勤できますか?」といった質問へ向けられた「何だコイツ」という目線は忘れられない。

 

総合商社の中の人:総合商社に採用される人材といえば、学校別で言うと東大・早慶の体育会系男子が大多数でした。最近はダイバーシティの名の下に、内定者の半数近くは女性・non-Japaneseですし、非体育会系男子もかなり増えました。人事部の思惑とは裏腹に、若手を受け入れる各部署は彼らの働きやすさやキャリアを第一に考えているわけじゃない。結局体育会系の上司は「若手を使いづらいなあ」と思うし、入ってきた子はそのギャップに苦しむんですね。

 

企業が本当にダイバーシティを推進したいなら、採用時の門戸を拡大するだけでなく、入社した後、フェアな人事評価をすべきだと各部署へ徹底させないといけない。総合商社は就活生からの人気も高いだけに、会社側やそこにいる人間からすると、いまだに「会社に入れてやった」という感覚が強いのだと思います。

ダイバーシティの観点から多様なバックグラウンドを持った学生を採るのはいいことです。けど、その美名の下に採用された人の気持ちを考えたことあるんですか?と思うことがあります。このままでは、いやすでに優秀な人材が採用できなくなることは必至です。 

 

商社が「現場」でなくなった結果、若手が活躍できなくなった

一般に、総合商社は40年かけて育成するから、即戦力を目指す外資とは違うと言われている。だが「育成のイマ」は変化に晒されているようだった。

 

総合商社の中の人:就活生の皆さんからOB/OG訪問を受けると決まって「投資をやりたい」と仰います。しかし、入社して若くして投資事業に携われれば、キャリア形成上、ハッピーかといえば必ずしもそうとはいえない。

 

総合商社が手掛ける事業はかつて「物流商売」と言って、国内外で商品の売買を行い、手数料を得るビジネスがメインでした。個人商店的な業務が多く、若手でも一人にお客さんを任せられることが多かった。けれど、いまや業態へ権益投資や事業投資も追加されて、チームを組んでやる仕事が増えました。そうすると若手はヒエラルキー上、雑用が以前より多くなります。

 また、総合商社はグループ連結経営を推し進めています。その結果、ビジネスの現場が出資先の関係会社に移っている。巨額の投資利益と引き換えに、若いうちからビジネスを経験する現場を奪われてしまった。個人が自分の働きで稼いでいるという実感を得られにくくなっているんですね。まとめると、こういうことです。

 

  1. コンプライアンス意識の高まりによる書類作業が増えた
  2. 案件の金額増加に伴い「失敗」の額も大きくなったたため上層部に説明責任を果たす社内報告が増えた
  3. ビジネスの現場が出資先の関係会社へ移り、お客さんや社外の人間と向き合う時間よりも、上司への報告や社内向け書類の作成がメインになった。

 

企業としてコンプライアンス遵守は重要ですが、一方でそうした業務を通じて得られるのは社外で通用しないスキルばかりです。

 

後輩に教えるのは「損」という文化

総合商社の中の人総合商社の場合、少なくとも30歳、場合によっては30代後半まで「下積み」が続くんですが、たとえば女性で30歳まで下積みをして、結婚・出産して子供が生まれてから職場復帰しても、接待や長時間労働を前提とする業務には戻れない。

かといって、育児との両立を考えてバックオフィスへ移ったら、もはや一生「商社パーソンらしい」仕事はできない。そういう女性のキャリアも考えてない。だから優秀でやる気のあるキャリア志向の女性が辞める。

 

また、以前の総合商社では、年功序列で先輩は自分の地位を脅かされることがなかった。現在の人事評価では前後何年かの年次が同じ職群に入れられ、その中で相対評価を受けます。そうして実力主義の名の下に「逆転人事」が生まれました。結局、部下や年齢の近い後輩に教えるのは「損」だという文化になる。だから前に比べて、部下や後輩の育成へ無関心になりましたね。

 

――人事評価に「部下へ指導しているか」という項目はないんですか?

総合商社の中の人:人事評価でも「人材育成」という項目は形式的にはあります。但し、部下・後輩に対して叱咤激励というより、パワハラに近いことをやっていると、上役からは「熱心に指導してるじゃないか」と言われますね。逆に部下や後輩へ寄り添って自主性に任せた指導すると上役からは「もっとビシビシやってほしいんだよね」と。表面上、部下や後輩に檄を飛ばしているタイプのほうがよい評価は付きます。

 

大体、新卒採用している大多数が東大・旧帝大、早稲田・慶應卒なんだから、本質的な人材にそんな差はないんですよ。しかも上記の通り、投資業務はチームで仕事をすることが増えたので、どこまでが個人の能力による成果なのか客観的な評価が難しい。そうすると、上役の好き嫌いで人事評価が決まってもおかしくありません。均質な人材を採っておきながら逆転人事をやれば、やる気を削ぐだけです。

 

 

ここまで、総合商社の中の人さんからお伺いした内容を編集して掲載してきた。近日公開の後編では「資源・エネルギーのビジネスモデルの限界」と「そもそも商社に来る学生が最優秀層ではない理由」の2点について、語っていただく。

 

 後編はこちら↓

toianna.hatenablog.com

 

 今回お話してくださった「総合商社の中の人」はこちら

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