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トイアンナのぐだぐだ

まじめにふまじめ

「総合商社に優秀な人は来ない時代がくる」 総合商社の中の人が語る、就活への警鐘(後編)

天下の外資系金融を蹴って総合商社を選んだ学生の記事「ゴールドマン・サックスを選ぶ理由が、僕には見当たらなかった」をきっかけに、総合商社の中の人とお話させていただくことになった。記事前編はこちら

 

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資源ビジネスは「中国と原油」に足元をすくわれる

商社は長らく資源ビジネスで利益をあげてきた。そして原油価格の下落についてはニュースでわれわれも知るところだ。だからこそ商社は「トレードから投資へ」と語っていたのではなかったか。

 

総合商社の中の人:総合商社は物流商売から、投資事業へ舵を切ったと言われますが、投資には大きく分けて「権益投資」と「事業投資」があります。

全社の権益投資でいえばここ10年の総合商社は軒並み、資源とエネルギーで儲かっていました。一部の総合商社にとって資源・エネルギービジネスは「すごく昔、安く仕込んだ権益投資が資源高で潤った」結果。中国・インドの成長と原油高に支えられてきました。

しかし支えのうち2つ、中国と原油がいまはダメになってます。資源ブームになってから投資した案件は採算が取りづらく、資源安になればすぐさま減損リスクを抱えます。

 

「高値掴み」に苦しむ商社の事業投資

総合商社の中の人:一方、事業投資は総合商社にとってさらに難易度が高い。権益投資は資源価格が上がればすぐに利益を出せますが、事業投資は投資後の「経営力」が問われるからです。特に資源・エネルギー以外の非資源分野、特にコンシューマー向けのビジネスはその傾向が強くなります。

 

しかも近年の総合商社は、資源・エネルギー高によって利益の水準が三ケタ億、四ケタ億になった。そのせいで、資源・エネルギー以外の非資源分野に求める利益水準へのハードルも上がってしまっています。本来、事業は「小さく生んで大きく育てる」のが理想。

ですが小さい企業のポートフォリオを多数持っても、管理コストが上がるしボラティリティがあるので、いまの総合商社が投資したがるのは安定的に利益が出る 企業だけ。

 

「世界的なカネ余り」の状況で、確実・安定的に儲かる投資なんて総合商社の機能が認められない限り、なかなか回ってこない。下手をすれば、功を焦って高値掴みに陥るのです。投資ファンドと違って、総合商社は投資先の株式を長期保有すると思われていますが、総合商社だからって投資先と一蓮托生なんてことはなく、利益を出せない出資先企業はどんどん売っています。

 

もともと、総合商社は凡庸な学生が行くもの

 そういった実態は、学生に知らされていないから総合商社を受けているのだろうか、それとも学生は覚悟を決めて「資源やエネルギーの価格がこれから底をついても、冬の時代を共に生き抜こう」と考えて入社しているのか?


総合商社の中の人:原油とエネルギー価格は少なくとも5年は価格が戻らないと言われています。中国の経済も厳しい。

そして総合商社は基本的に最初の配属先を選べないですし、極論すれば運で担当業務が決まる。今の社員は、会社に残れれば逃げ切れると考えている人も多いです。しかし、60歳で定年退職して65歳で年金を貰うまで、或いは70歳まで満足いくペイで働けるスキルも身につかないのが現状。そういったことを少し調べれば判るのに、調べていない時点で総合商社に来ているのは優秀な学生ではないでしょう。

 

就活をする時点で、最優秀層とはいえない

総合商社の中の人:就活は結局、大学生までにキャリアを決められなかった人間の「敗者復活戦」です。極端ですけどプロ野球選手、ピアニストになれる人たちは小学生からやること決めてるわけです。就活って生まれた瞬間から始まってるんだぞと。

ある程度凡庸な人だから、大学生になって初めて自らのキャリアを考えざるをえなくなり、就活をするわけです。折に触れて自分のキャリアを考える時間があったはずなのに、大学3年生や就活を間近に控えてから急に焦って「就職先」だけを考えて、OB/OG訪問をしても遅いんですよ。しかも、大体の場合、就活生にとってOB/OG訪問は就活をやっている「意識高い」自分に酔っているだけなんです。

 

SNSに書かれるのが怖い」と本当のことを話せない社員に時間を割いて会うくらいなら、ネットや書籍で調べられることはたくさんあります。限られたランチタイムで初対面の社会人に「やりがいは?」なんて聴くのは失礼ですし、そんなことを訊いて何の役に立つのか? 質問のための質問、OB訪問のためのOB訪問になってしまっている。


ただ、自らのキャリアを考えられない原因の一旦は親にもあります。この10年、就活生の親はバブル世代。就職に苦労してないですから、自分たちの子供がこれから苦労すると判ってないんですね。しかも、当時の価値観を引きずって「大企業なら安泰」と考えています。

いまの就活生は親から「会社に何かあっても独立・転職できるスキルを身につけろ」と教えてもらえない、不幸な環境に育っている。仮に子供がベンチャーへ行きたいというと「親ブロック」まですることもある。


――ではなぜ「総合商社の中の人」の世代は辞めていないんですか?

総合商社の中の人:僕みたいな、アラフォーが就活した時代はすでに就職氷河期でした。僕の受けた時代、総合商社は大学時代の成績も重視しないと言われていて、かつ難しい筆記試験もありませんでした。それで易きに流れて入社試験を受けた結果、たまたま、ある一社から内定を頂いて入社したんです。

僕自身は商売人になりたかったわけでもないし、商社マンに憧れていたわけでもない。入社前から体質的に合わないだろうなあと思ったら、入社初日の歓迎会で二次会のカラオケに流れる前に先輩から「ナンパしてこい」と言われて。うわあ、これはマジで合わねえなと。

 

世間の印象通り、商社マンは遊びが派手でした。先輩たちの武勇伝を聞くと、外車を買ったり、遊興費で使ったりして入社数年で数百万円の借金を背負うのが「当たり前」。僕も周りに流されて激務の憂さを晴らしているうちに数百万の借金を背負っていました。嫌だと思っていたくせに染まっていたんですね。だから、恥ずかしながら辞めるに辞められなかったんです。若い人には偉そうには言えないのですが、そうであればこそのアドバイスだと思ってくれれば。

――失礼ですけど、遊女が借金して足抜けできなくなるみたいな話ですね……。

独立できるスキルを身につける場所を考える

――では、今学生はどういった業界へ行くべきでしょう?

総合商社の中の人:業界に関わらず、自分で力をつけて、いざとなったら独立・転職できるスキル・経験が身に付くような場所がいいと思います。たとえばCyber Agentの藤田社長自身がそうだし、同社の若手みたいに、優秀でやる気がある社員は20代で経営を任せてもらえる機会もあるし、独立もできます。

かつてと違って、日本でもこれだけ起業の環境が整ってくれば、キャリアでの自己実現を考える時にもはや所属先が大企業である必要はない。


これからの時代、男女を問わずほとんどの人は70歳まで働くのだから、自身のキャリアを「積み上げ」で考えてほしいですね。世間が考える「いい会社」に運よく入れたところで、リストラ等で会社を放り出されてそれまでの経験やノウハウがリセットされてしまっては元の子もありません。

いまの就活生は70歳まで自分がキャリアを「積み上げられる」分野やスキル、経験は何か?という観点で、ファーストキャリアを選んでほしいし、そのために貴重な新卒カードを切るべきだと思います。

――そういう意味では私の経験した外資は確かに、専門性が身につく業務が多いように感じます。代わりに、名刺の渡し方なんて教えてくれませんが……笑

誤解のないように言いますが、私は採用してくれた会社にはとても感謝しています。社会人としての最低限のマナーやルールも教えてもらったし、やりがいのある仕事もさせてもらいました。総合商社ならでは経験もさせてもらったと思いますし、長く働いてきているので愛着もあります。

ですが、いまの学生さんに手放しで勧められる職場ではないということを知っておいて頂きたいのです。就活生で総合商社を志望される皆さんにおかれてはこの話を聴いてもなお、自分は総合商社に入って仕事をしたい、というのであれば、ぜひご一緒に、これからの苦境を乗り越えるにはどうしたらいいか、汗をかいていければと思っています。

 

――ありがとうございました。

大学時代、総合商社は「憧れ」だった。どこか自分は内定できないだろうと感じて結局本腰を入れて対策もしなかった。そのくせ、私も周囲が受けるからとエントリーする絵に描いたような「ミーハー就活生」だった。

総合商社へ行く学生が、あらかじめ上記のようなリスクを覚悟できているならいいだろう。だが、都合の悪い話を耳をふさぎたくなるものだ。どんな企業にも課題はある。大切なのは、課題を認識しているかだろう。彼のメッセージを少しでも多くの若者へ伝えるために、ここへ記録を残す。

 

 今回お話してくださった「総合商社の中の人」はこちら

twitter.com

 

前編はこちら

toianna.hatenablog.com