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女性管理職はなぜ「部下潰し」をしてしまうのか?男女平等の「不都合な真実」

 

女性管理職は部下を潰しやすい。この話題は外資系企業における「最大のタブー」だ。外資系企業では女性が男性と同じように働くのは当たり前。管理職へも男性と同じように登用され、男女差別は厳しく処罰される。そんな外資系企業で「女性は管理職に向いていない」などと言おうものなら、明日からデスクが無くなるかもしれない。

 

個人的には認めたくないが、経験からいうと女性管理職は部下をつぶしてしまう人が多い。統計的には日本の3倍女性管理職がいるアメリカでも「女性上司のほうが(男性より)いい」と答えた人は6.3%しかいない

なぜ女性上司は部下を潰してしまうのか? いくつか周囲であった「部下潰し」の事例を書いてから考えてみたい。

事例1 役員の前で部下が使えないと泣き出した上司

「こんな使えない部下、もう耐えられません!」

上司が役員の前で泣き出したとき、部下の佐藤さん(仮名)はあっけにとられた。女上司はかねてより佐藤さんを厳しく指導しており、周囲から見ても「あの上司はスパルタだねえ」と同情されていた。

佐藤さんは女上司の期待に応えようと努力したが、ほぼ完璧な書類を提出しても「なぜ私の書類と100%同じものにならないの」と叱られ、次第に会社へ行くのが辛くなっていた。しかし佐藤さんは「きっと自分に期待してくれているから厳しく指導してくださるのだろう」とポジティブにとらえていた。

しかしその後、女上司が「佐藤さんは使えない」と周囲に触れ回っていたことがわかった。「周りの社員はみんな自分を無能だと思っている」と感じるようになった佐藤さんは、あくる日から会社へ行くことができなくなった。


事例2 メールを一言一句赤字で修正する上司

主任の平井さん(仮名)は、女上司の許可がおりるまでメールを出すことができない。女上司が新しく来てしてからメールを出したところ「敬語がなっていない」「日本語がおかしい」と指摘を受けたからだ。

それ以来、平井さんは女上司が赤字を入れたメールを「清書」してからでなければメールを出させてもらえなくなった。平井さんは自分でビジネスマナーの本を読むなど改善の努力をしたが「句読点の位置を1文字ずらせ」「"申し上げます"は"申しあげます"にしろ」といった細かい修正が止まることはなかった。

その結果、平井さんのプロジェクトは納期に間に合わないなど支障が発生し、上司は平井さんをそのことでさらに責めた。平井さんはうつ病と診断され、会社を退職した。


このように、女性管理職による部下潰しの特徴は部下を必要以上に追い詰めてしまう点にある。なぜ、女性は部下の誤りを必要以上に責めてしまうのだろうか?

 

理由1 先輩女性の不在

まず女性管理職には「女性の先輩社員」が少ない。現在管理職の女性は多くが「初めての女性マネージャー」なのでノウハウを教わりづらい。しかし、先輩が同性である必要はないだろう。なぜ、女性管理職は男性上司からマネジメントを教わることができないのだろうか?

その理由はマネジメント技術の多くが終業後の飲みや喫煙所など「課外授業」で指導されてしまうからだ。いまでも多くの会社には管理職が部下を飲みに連れて行ったり、喫煙室で指導したりする文化が残っている。

人事部の管理職研修でカバーしづらい細やかな指導が業務時間外で行われるので、部下も喜んでついて行きたいところだ。だがこういった「課外授業」スタイルでの指導は、女性のライフスタイルにそぐわない。

家庭がある管理職女性ならば「保育園のお迎えが」と帰らなくてはいけないし、喫煙者の比率は女性の方が低い。社内でも「不倫している」とあらぬ疑いを受ける可能性もある。そのため女性は「課外授業」を受ける機会が男性より減ってしまうのだ。


理由2 男性管理職に勝つため「ハードワーカー」となる

ハードワーカーは性別問わず「部下つぶし」をしやすい。「自分はこんなに頑張っているのに、部下がサボっている」と考えてしまうからだ。前述の事例でも女性管理職は部下へ「どうして私と全く同じレベルの仕事ができないのか」と厳しく指導を加えている。「これだけできれば上等だ」と、手綱を任せることができないのである。

また、ハードワーカーの指導は深夜にまで及ぶことが多い。本人はいつもどおりの就業時間で指導をしているつもりなのだが、日常的に深夜まで細かな点について指導されると、部下はストレスを溜めやすい。

ではなぜ女性管理職にハードワーカーが増えるのか。それは、女性が管理職になるためには飛びぬけた成果が必要だからだ。女性管理職は全体の1割程度しかいない現在、女性でありながら抜擢されるためには周囲の同期よりもずば抜けて仕事ができねばならなず、ハードワーカーにならざるを得ない。

アメリカでも、知的労働者の女性は育休を3ヶ月以内に終えるのが通例である。そうしないと男性管理職より数字上の成果が低くなり、出世競争に負けるからだ。日本社会では、さらに残業を努力の証として評価してしまう風土も影響するだろう。女性で管理職になるためにはハードワーカーである必要があり、その結果「部下つぶし」の適性を持ってしまうのだ。


理由3 部下の育成が業績であるという認識がない

女性管理職の大半は「係長」であり、部下育成経験を「次の出世」のステップにした経験がない。男性管理職の場合、部下を潰してしまうと「あの人、仕事はできるけど部下を育てられないから」と出世が遠ざかるリスクとなる。だからこそ先輩からノウハウを必死で学び、部下の育て方を知っていく。

しかし女性管理職でまだ係長職の場合、部下を「自分のコピー」に近づけて目の前のプロジェクトを動かすことへ集中してしまいがちだ。部下を育てられず処分された女性上司の前例や、さりげなく教えてくれる同性の飲みニケーションもないからである。

もともと部下は他人であり、自分と全く同じ仕事はできない。しかし部下を「自分のコピー」に近づけようとすれば、指導のために膨大な時間がかかり、プロジェクトは遅延する。そして優秀なプレーヤーだった女性管理職は「プロジェクトが危ない!」と目の前の部下を「正そう」としてしまったり、ひどい場合には「もういい、無能なあなたに任せた私がバカだった」と仕事を奪ってしまう。


こうしてみると、女性管理職が部下つぶしをしやすくなる背景には「人一倍頑張らないと認められない性差別」や「過去の性差別で残された"先輩不足"」にあると言えそうだ。

安倍政権はこれから女性管理職の登用を推進していくと述べており、それ自体には私も大賛成である。だが、単に女性の管理職を増やせば「部下つぶし」をしてしまう未熟な上司が増えてしまうことになる。これを変えるためには「先輩管理職の課外授業」を女性にもフィットした形で用意してやるしかない。

部下の指導は新宿の思い出横丁ではなく、表参道のヨガ教室でもいい。社内だけでなく、業界の女性管理職で集まってもいい。「私、自分にも他人にも厳しいんです」と誇りを持って部下を潰す女性管理職が「私、部下には強みを生かせるよう柔軟に指導したいんです」と切り替わるためには「先輩」が必要とされているのだ。


※事例は個人情報保護のため、一部改変しています。予めご容赦ください。

 

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