ある女性が偽者のカルティエを販売し逮捕された。たいした事件ではないが、彼女のTwitterアカウントが判明してからは大騒ぎになった。実は彼女「ばびろんまつこ」という名前で有名ホテルやブランド品の写真など、セレブツイートをしては憧れの的となる「キラキラアカウント」の代表格だったのだ。
日曜日の皆様へ、とあるラグジュアリーコレクションにてバカンス中のオカマをお送りします。 このスクール水着のようなデザインが気に入ってます。 pic.twitter.com/gVc7PGvjJF
— ば び ろ ん まつこ (@matsuko1223) 2015, 8月 23
私が悪趣味の一環としてキラキラアカウントウォッチャーをして数年になる。ばびろんまつこ氏のような逮捕による消失は異例だが、いくつもの女性アカウントが彗星のようにまたたき、消えていった。すでに名前すら忘れ去れた者も多いだろう。そこで備忘録代わりに、歴代キラキラアカウントを記してみたい。
すでに消失したアカウントや、鍵アカウントは記載しない。(例、チワワ先輩、夜の意識高い学生、Lady / 敬称略)
キラキラアカウント黎明期 2009年~2012年ごろ
このころはキラキラアカウントが存在してもラグジュアリーな生活をほしいままにする純粋な富裕層が多かった。炎上系女子が登場したきっかけも含め、追っていくことにする。
この石原さとみちゃんの写真、昼間友達から送られた時に、自分でも自分の写真かと思った!!ただし、最近ほっぺのお肉が増えたのでこれでほっぺ膨らませると私。 pic.twitter.com/nnyVQekj5X
— あんじぇღ (@ange_y1) 2014, 6月 6
石原さとみさんに似ているらしいあんじぇ氏は2009年ごろからの古参。バリ旅行などアッパークラスな暮らしが似合う純粋なキラキラを感じ取れる。最近は落ち着かれた様子でほっこり温かいツイートを拝見できる。
最近、何人ものアラフォー女性から『愛人紹介してください。月100万位欲しい』って相談があるんだけど、100万ウォンなら見つかるかもね、と。 彼女達は自分を相当綺麗だと思ってるけど、学歴と良い職や、賢さを持っていない女性は、 投資したいと思われないのよ。
— 白鳥麗子 (@shiratorisama) 2015, 7月 9
白鳥麗子氏も2009年からの古参。バリバリ働きながら、ラグジュアリーな生活を楽しむという誰もがあこがれる暮らしを体現。現在は鍵アカウントに。
年収5000万円以下の男と付き合うってどんな感じなの?
ここから炎上系キラキラが生まれる。外資系美女、marieさん。彼女のツイートは全削除されているが、こちらの【Twitter】元外資系の美女が上から目線すぎて面白い - NAVER まとめ から代表的なツイートを把握することができる。恋愛に対する強者目線でのコメントは圧倒的支持を得、数千人のフォロワーを誇った。
Twitterで恋愛だ、泡だ、女だ語ってるうちは、三流だよ。
— 清宮こころ (@seimiya_kokoro) 2014, 5月 10
銀行員から転職し「愛人斡旋業」で生計を立てているらしい女性アカウント。恋愛ハウツーやゴージャスな暮らしぶりが元祖キラキラアカウントとして信者を集めた。現在でもその片鱗をブログでは拝見できる。ラグジュアリーな暮らしをTwitterから垣間見て、自分が知らない世界を学ぶというキラキラアカウントの効用を一番に発揮した存在。2016年現在、アカウント削除。
なお、著書『愛人という仕事』も執筆されている本格派。
リムジンや高級ホテルにいる私達凄いでしょ、と見せびらかしているようですけれど、逆に恥をかいていることに気付かないなんて。自分は庶民ですと訴えているだけなのにね。
— アリス (@ars_0xox0) 2013, 9月 10
単なる成金じゃない、上質な富裕層の暮らしを唱える元祖アカウント。アリスさんはアクは弱いもののグサリと刺さる恋愛のtipsをつぶやいてくれることが多い。最近はあまりツイートされていないのが残念。
自分のことを好きだと言って 大事にしてくれる人がいるのに 私は一体何が不満なんだろう。 自分のモノにならない人に こんな時間から会って 何れ大事な人を傷つけるのは目に見えてるのに。
— Queen Bitch (@queen_bitch625) 2013, 7月 24
キラキラアカウントは通常人間味があまりなく、「中身はおっさんではないか」などと疑惑を持たれることがある中で最も人間らしい初期アカウント。詩を詠むような改行はタイムラインでも目を引いた。
こんなことリア垢では言えないけど、すれ違い様にガン見されたり二度見されたり、ぼそって可愛いとか美人って言われたりするのって可愛い子の日常なの♡可愛い子だけにわかって貰える話♡
— まりこ♡ (@marimari_0808) 2015, 8月 31
古参でありながら現役活躍中のアカウント。キラキラアカウントが白抜きのハート(♡)を多様するようになったのはひとえにまりこ様の影響ではないかと思われる。キラキラアカウントは内容がファッション、恋愛に偏る傾向があるため、本人も飽きるのか長続きしにくい傾向がある。まりこ氏はツイート頻度は低いものの、安定して恋愛キラキラを呟いてくれる貴重なキラキラアカウント史の証人である。
「…飲みさえしてれば機嫌いいんだな。。。」と、呆れられるキラキラ女子はこちらです♡ふゎーお♡
— 二宮ゆみ (@yumininomiya) 2015, 10月 25
こちらも現役活躍中。他のアカウントが「誰かを貶すことで注目を集める」路線であるのに対し、自虐ネタと気さくな人間味で安定的人気を誇る穢れなき光のキラキラ女子。
キラキラバブル発生 2013~2014年ごろ
2014年ごろはキラキラアカウントが発生しては消滅する、キラキラバブル期だった。特にひとの生き様を強者目線でお説教しつづける「お説教系」の誕生は目を引いた。ばびろんまつこ氏もここに入るが冒頭で引用したので割愛。
私のスペック。既婚、所謂代々資産家の両親のもと渋谷区に生まれ米国で育ち十代後半から日本に戻り某私大卒業後総合商社勤務を経て寿退社。現在は専業主婦の傍ら同族企業役員。趣味は美術史の勉強とパフォーミングアーツ鑑賞。金髪モデル好きで金融世界の奴隷となっている夫とは週末婚。私は負け組か?
— Xiao_mom (@GirlXiiao) 2014, 12月 21
通称「シャオガール」と呼ばれる彼女は、帰国子女、総合職、親は大富豪、アートとランニングが趣味で夫は大企業の御曹司、というとんでもない負荷を設定に背負いながら爆走し続けるキラキラの女王だった。 それまで「愛人」など想像しやすいキラキラ設定の女子が多かった中、設定にパワーインフレがおきるきっかけとなった。
ホワイトのパンツスタイル選ぶのはご自由です。夏ですし。でも、ガバガバのショーツにパンティラインでおしりが4つに見えるような女性は控えた方が良いのでは。普段からヒップ鍛えている、選ばれし女性が着こなしますのでご安心を。
— Xiao_mom (@GirlXiiao) 2013, 7月 22
このアカウントはウォッチ対象としてお気に入りだったのでもう1つ引用。残念ながら最後は「アルコール摂取ツイートしてすぐに妊娠出産の報告をする」など設定に緩さが目立ち減速した。
20代の女なんて一生で一番綺麗で楽しいかもしれない最高の時期だと思うんだよね。一度の人生、その時期をどう過ごそうが自由だよね。ちやほやされたいもキラキラしたいも自分でそれが最高だと思って選んだ訳。人生なんて楽しんで享受したもん勝ちだよ。
— 西麻 布子 (@nisiazabukochan) 2015, 11月 13
西麻 布子氏は元祖お説教系アカウント。女性の美容、生き方などを果てしなくツイートする一方で、本人の暮らしぶりはまったく明かさないため中身が誰かはさまざまな憶測が(というかオッサン疑惑が)飛び交っている。
そういえば私女の子に馬鹿にされた事見下された事って一度もないかも♡好かれてるのか恐れられてるのか尊敬されてるのか媚びられてるのか知らないけど(笑)
— jessica♡ (@sweeetjessica) 2015, 1月 30
jessica氏は天真爛漫、無邪気に愛されている自分をツイートするアカウント。シャオガール氏などが他人をdisりぎみなのに対し「私はただ高いところにいるだけです」というポジショニングが特徴。現在も活躍中。
35歳過ぎのオバサンが高収入でルックスの良い男性と付き合えるのって100円で新車のフェラーリを買うのと同じくらい難しいからね...
— ♥♡zuki♡♥ (@zukizuki666) 2015, 10月 19
とにかくブスと30歳を過ぎた女性をディスるアカウント。それまでキラキラアカウントにマウンティングは欠かせない要素と思われていたが、あまりに貶すだけの要素が多いと、多数のファンは獲得できないことが彼女によって明らかにされた。現在もIDを変えて鍵アカウントで運用中。
こないだ友達に 自分が1番大事だから男なんてどうでもいいし、結婚のメリットがわかんない。 って言ったら そんな可愛い自分を守ってくれる人が年々いなくなるんだよ?(´・_・`) って言われて納得しかけたけど、 果たして男がなにを守れるの??親が残してくれる遺産のが守ってくれるわ、
— アンナちゃん。 (@notgoodper) 2015, 1月 18
あまり知られていないが私がずっと見ていたアカウント。男より親の遺産の方が私を守ってくれるなど、衝撃的なフレーズが飛び交う。自分がいかに愛されているかをアピールする点は、キラキラアカウント黎明期を思い起こさせる。2016年現在、消滅。
地に足のついたキラキラを求めて 2014年ごろ~
大富豪の子女や絶世の美女などキラキラ度のインフレが起きる中「もっと身近にあこがれられる女子を知りたい」ニーズが高まっていた。そんな中で登場したのがこちら。ツイートを読むと「私も頑張ろう」と思うことができるのが効用。
ペアーズやめたけど、あれ簡単に彼氏できるツールすぎて笑える。 会ったら全員にアプローチ受ける。顔写真あるから私のことタイプな人しか来てないのもありデートしたら100発100中! ハイスペイケメンに絞ってるけどまだまだストックいるしいつ決めようかな?悩む!
— レイコとまゆみ (@reikotomayumi) 2015, 9月 14
「コンパ戦士」を名乗る合コンのプロフェッショナル女子。キラキラアカウントの複数人による運営の草分け的存在。他のアカウントと揉めたかと思いきや合コンのSWOT分析をするなど「やたら感情的なコンサル」としか説明しようのない言動が特徴。私は好きです。ブログの恋愛分析もおすすめ。
周りにお金持ちが居ないのに、「お金持ちと結婚したい」という人は、どこで探す気なんだろう
— 東京姉妹 (@tokyosisters69) 2015, 11月 15
レイコとまゆみ氏とほぼ同時期に誕生、拮抗あるいは超越する存在となった東京姉妹。姉妹でアカウント運営をしており、のちに分裂。 一時はAMや女子SPAでの連載を手がけるライターとしても輝いた。
混戦状態の ニューウェーブ 2015年~
2013年ごろにヒットしたアカウントが炎上あるいは媒体連載などでソフト路線に落ち着く中、より濃厚なマウンティングや新路線が次々に登場している。
昨日シノワで意気投合した商社マンとお泊りしてハイアットで朝食〜♡シャンパンフリーフローのコース頼もうとしたら露骨にやな顔されたから連絡先消そっと。昨日の夜は何頼んでも笑顔で答えてくれたのに。。稼いでない男に私とデートする資格なし♡ pic.twitter.com/H3pUkq0kAs
— リリー (@Lilly_Tokyo_) 2015, 11月 8
数週間で1万フォロワーを稼いだ、脅威の新人。自分は無職であるにもかかわらず「お金持ちと結婚して私はボランティアに精を出す」「関係を持った医者と思しき男性のマンションを晒す」というムチャ振りで炎上、一気に有名となる。 ただし現在は路線に迷走中。マネタイズ目的で作られた偽装キラキラではとの声も多い。
彼氏も高学歴で誰もが知る人気企業勤務でオシャレだけど、イケメンではないよ。 わたしも大して美人じゃないのに、期待を超えるほど尽くしてくれるからそれだけで充分幸せなの♡♡
— 丸の内OLくるみ (@MsHazumi) 2015, 11月 14
@MsHazumiはかつて私がキラキラアカウントの実験用に製作。その後飽きて「♡美桜♡」という別人キラキラアカウントへ無償譲渡した。彼女はアフィリエイトのマネタイズ目的で運営したようだが、さらにその後♡美桜♡ 本人のアカウントが炎上、本人特定の末消滅。今は誰が中身をやっているのか?真相は藪の中である。
働いたこともなく、結婚しこの先一生働くことないって話した時の、自分は苦労してきたし、苦労しないと何も得られない語りが始まる人なんなの?『私、持って生まれたものが違うので一緒にしないでください♡』って言ったら、殺されそうな雰囲気になるんだけど。ほんと怖い〜
— りちゃこ (@123456789richa) 2016年6月30日
医師の奥様。このころから「医師彼」「医師奥」など彼の職業と立場を組み合わせたプロフィールがキラキラ女子界に普及した。他人を積極的に殴っていくキラキラアカウント過激派なので、読み応えがある。
美容代とかお洋服代とか、いくらかかってるのか考えたことないし知らない♡ジムはお家にあるし♡
— ♡Rika♡ (@strawberry___27) 2015, 11月 15
キラキラ女子アカウントをずっと観察してきた身としては、こういう元祖に近いアカウントが出てくるとわくわくしてしまう。おそらく黎明期から活躍している「まりこ♡」インスパイア。
好きな人は特別 だ・け・ど 1人とは限らないんだよね♡
— 酒豪ガール (@syugougirl3) 2015, 11月 4
キラキラというか、ガツガツ系新卒女子アカウント。数々の男性とアプリ経由で出会ってデートし、そしてブロックするという芸風を確立。最近は落ち着いているかと思いきや、オンラインサロンで恋愛指南をしている模様。
ちなみに私はハイスペって聞いたら年収3000万以上、学歴もそこそこの人イメージしてるけど、実際はどの程度からがハイスペってカテゴライズされてるの?
— さくら (@sakura03cherry) 2015, 10月 28
最近のキラキラ女子の中でも顔文字や♡が少なく冷静なアカウント。ドスのきいたキラキラツイートが読んでいると癖になる。しょせんTwitterじゃん、と現実とネットを混同しないスタンスが小気味よい。
M&Aキャピタルパートナーズの知人合コンで年収自慢したら千葉在住の女性に帰りのタクシー代請求されていて気の毒だった。年収自慢すると弊害しかないのに平均年収男は年収しか武器がないことを自覚しているためこういったその卑しさの罰金を受け入れなければならない。
— シャイニング丸の内 (@dogthings3) 2016年7月13日
この方に言及せねばガセウォッチャーと言われるくらいの有名人。年収1,000-2,000万レンジのOLさん。個人的には彼女はキラキラアカウントというよりバリキャリの気概を感じるので、キラキラウォッチャーよりも就活生が熟読したほうがいいと思う。
一般職までいくとどうでもいいんだけど、中途半端に仕事してますアピしてくるゆるふわ早慶女子が一番腹立つな。特に勉強出来るわけでもない親の金で学歴買ってる附属あがり!!!!
— 丸の内M子@婚活 (@Emukosan710M) 2016年7月2日
「丸の内」と頭に付けるアカウントはバリキャリの傾向があるのだが、この方もその1人。マウンティング要素ゼロなので、キラキラアカウント初心者でも純粋な心でフォローできる。
インスタに食卓の写真のせるならクロスくらいひきなよ。ご飯とスープの位置逆ね、煮物の角明らか煮崩れてるから面取りしなよとかそんなことばかり考える。上手なひとは本当に美味しそうな料理のせるから下手な子は絶対あげないほうがいいよ。地鶏と同じくらい見てあぁってなる。
— moe (@moe_k0) 2015年10月7日
育ちの良い女子系マウンター。過去ツイートを丹念に見ていくと家庭不和だったことをにおわせることも多く、彼女がなぜ育ちのいいアピールをしたくなったのか原因を推察することもできる。
誕生日をバリアンで祝われたら絶対別れる💔私の18歳の誕生日は、彼にリッツのスイートでお祝いしてもらってプレゼントは定番だけどバラの花束💐とHARRYWINSTONの時計を頂いたよ🎀 pic.twitter.com/gkQrnvoCPf
— みやこ (@miyaaa91a) 2016年7月16日
最後に王道・新星キラキラアカウントを。彼女たちを見る理由の1つに「バブリーな金銭感覚を見て自分の買い物欲を満足させる」ことにある。みやこさんのツイートを見ると10億円資産が無いものはつつましく暮らさねば……と感じるので倹約がはかどる。
おわりに
今までとりとめもなくキラキラ女子を見てきたつもりだが、思いのほかウォッチ人数が多いことに愕然とした。私ヒマなのかな。
ウォッチを始めた当時を思い出すと、激務時代のトイレ仮眠が思い出される。眠りに落ちる前、トイレから携帯で見るつかの間のキラキラは「激務には報いがあるはず」という夢を与えてくれた。
セレブ界の言語をインストールできるのも個人的には楽しい。少なくともシャンパンフリーフロー(シャンパン飲み放題)や、モナリザタッチ(膣へレーザーを当てて若返らせる美容法)なんてウォッチしてなかったら一生知らなかった。少なくとも、飲み会のネタにはなるだろう。
最後に、キラキラウォッチは節約になる。彼女たちが勝手に飲み、出会い、消費する世界を覗くだけでラグジュアリーは十分、と満足できるからだ。ユーズドのdiorを買いながら、新品を買うラグジュアリーさはキラキラ女子に任せる。キラキラ女子によって身の丈を教えてもらえるなら、通信費なんて安い。というのがいまのところ結論である。
自著の告知。もし彼女たちみたいにキラキラしたいと思ったあなたはありのままの自分を好きになる訓練をしたほうがいいかも? 自尊心を育てるエクササイズを掲載しているので立ち読みでもどうぞ。
キラキラ女子、もとを辿れば一流の夜の女性を見る憧れに近い。こちらは白洲次郎や川端康成が通った伝説のバー、おそめの物語。
闇のキラキラといえば、直木三十五、中原中也、坂口安吾、菊池寛と歴代文士に愛された坂本睦子(wikipedia)。白洲正子が「銀座に生き銀座に死す-昭和文学史の裏面に生きた女」というタイトルで追悼文を執筆、この本に収録されています。