今まで数百名の就活相談に乗ってきたが、いつだって傷つくのはMARCH以下の学生だ。たとえトップの成績でも、就活は学歴フィルターで落とされる。
あるときは「なぜあんなバカ慶應生が内定して、俺は説明会すら呼ばれないんですか」と泣いているMARCH生の言葉に、頷くことしかできなかった。地方で頑張った子が期待の星と上京しても、就活ではいきなり「勉強できなかったんでしょう」と非エリートの烙印を押される。
一部の学生は起業したり、若干名あるトップ企業の採用枠を潜り抜けて社会的成功を掴む。だがここではもっと一般的な学生の話をしたい。就活で初めて学歴差別を思い知ってから、どうやって生きていけばいいのか?
東南アジアで新卒就職はハイリスク
アクセンチュア出身者の大石哲之氏によれば「英語力を死ぬ気で身につけて、東南アジアで就職する」のが突破口の1つになるという。実際に語学学校では本とコラボしたセブ島での英語特訓プランもある。

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だが、私は東南アジアでの就職もハイリスクだと思う。フィリピンを例に取ると、日本人は現地人より高い給与を得られるようだ。しかし評価されるのは「日本企業と渡り合える経験」であり、新卒は正直お呼びでない。また、その実績が帰国後に転職活動で評価される保証もない。
新卒から海外就職を選び楽しんでいる人材もいる。しかしそういった人は「大多数と同じ生き方より、面白いことをしたい」と思える、馬力が強い人のようだ。対して「大企業に入れないならもうダメだ」と自分を追い詰めるような、いい子としてこれまで育ってきたタイプであるほど生き残りにくい。
参考:新卒で海外就職を楽しめている人たち。「今自分が行けば面白い人材になれるんじゃないか」といった生命力に溢れるコメントが多い。
いきなり海外へ飛び、孤軍奮闘できるのはごく一部。ほとんどの人間は育った地域から離れることもなく、友人や親がいる環境で「頑張ってるね」とささやかな承認を得て暮らしたいはずだ。では国内でこれからを生き抜くにはどうすればいいか。私は「英語」と「専門知識」の掛け合わせだと考えている。
英語と専門知識を組み合わせればオンリーワンになれる
まず、英語だけで食べられる時代は過ぎ去った。外注サイトのランサーズで調べると、翻訳・通訳の相場は時給1,500円に過ぎない。Glammarlyのようなオート英語校正プログラムの発達も目ざましく、いずれは翻訳業のほとんどは消えてしまうかもしれない。
たとえば私へも「英語できるんでしょ? ついでに通訳してよ」とタダ働き同然の依頼がある。知人経由で「皇室関係者の通訳だから名誉だと思って」と通訳依頼が舞い込んだときは面白がって受けたが、はっきり言って国際機関とのコネでもない限り英語単体で食べるのは厳しい。
だが、英語と専門知識をセットで身につければ話は変わる。たとえば医療事務は最難関資格でも3割合格できるので資格単体で就職楽勝とはいかないが「英語のできる医療事務」であれば一気に市場価値が高まる。
英語で接客できる飲食店とそうでない場所はもっと分かりやすい。英語版ウェブサイトでオンライン予約できれば海外観光客も訪れやすい。ネイリスト、保育士、調剤薬局事務といった単体ではキャリアアップを見込みづらいスキルも「英語ができる」と頭に付くだけで一気に人生が開ける。どんな服にも装備できる武器、それが英語だ。
「なぜ英語を頑張らなくちゃいけないんですか。日本で暮らしていれば、別にほとんどの人は英語使わないですよね」と就活相談で訊かれることも多い。その通りだし「これから英語がないと生きていけない時代が訪れる」などというつもりはない。別にヨーロッパでも英語が通じない土地はザラにあるし、日本で公用語を英語にする日がくるとも思えない。
「でも、英語ができれば年収200万円は上がると思うよ」と私は答えることにしている。英語が少しできるからという理由で、私が履いた下駄はこんなものだった。学歴差別に落胆した人にこそ、英語と専門スキルを組み合わせて人生を乗り越えて欲しい。
あなたがもしこれから新卒就活をするならば、1度上記の内容は全て忘れてほしい。今すぐ高学歴の友達に就活状況を訊こう。そして一緒にセミナーへ潜り込もう。英語力よりも日系企業ではTOEICスコアがものを言うから、模擬試験受けまくってスコア上げよう。
新卒では多くの企業が未だにTOEICスコアだけを求めているので、現場で通用する「英語力」すら査定されない。英語が苦手な多くの学生にとって、アウトサイダーな手段より新卒就活を勧めるのはこの点に尽きる。
関連記事。こちらでは抜本的な「英語力」について書いた。