トイアンナのぐだぐだ

まじめにふまじめ

炎上で自殺未遂。SNSや恋愛へ依存して幸せになる道はあるか

SNSのフォロワー数とは、あなたの情報を見ている人数を指す。芸能人などささやかな日常風景をツイートしているだけでフォロワーが大勢つく人間もいる。その一方で無名からスタートし、人気アカウントになる方も多い。

 

それまで人生で注目されてこなかった後者の人にとって、フォロワー数は承認欲求を満たす道具になる。自分にファンがいる、そのためにもっと注目を浴びられるよう、尊敬されるよう頑張ろう……。

 

だが、インターネットの承認欲求は副作用も強い。フォロワー数が減ると不安になりやすい。mixiでも「そうしてあなたは去ってゆくのね」と誰がマイミクを外したのかわかるアプリがあった。そんな風に去る人を追いかけ、フォロワー数に一喜一憂し始めると、むしろ不安になることの方が増える。SNS依存の始まりだ。

 

北条かやさんのしんどさは、他人事ではない

この記事でTwitter炎上からの自殺未遂を語った北条かやさんも、同様にしんどい思いをしていたんじゃないだろうか。

炎上・入院・エゴサーチ…「底つき」の果てに得たコンパス

 

ライターはフォロワー数が報酬へ大きく影響する。「記事の告知をして何名が読んでくれるか」は、原稿料に含まれている。良質な記事を書くTwitterをやっていないライターよりも、フォロワー10万人いる人が重宝されるのだ。

さらに自分の名前で検索する”エゴサーチ”も業務の一環である。記事を発注してくれた企業が、URLをメールで送ってくださるとは限らない。それで閲覧数が減っても困るので、自分で記事公開ツイートを探し共有する。その過程で自分への批判を目にすることも少なくない。

 

私は外資勤めで鋼のメンタルを得てしまったので、批判で傷つくことはあまりない。面と向かって「詐欺師」「ノーバリュー」「知能検査受けたことある?」と言われ続けた人間としては、知らない人からの罵詈雑言はだいぶマシである。本気で反論したければロジカルに相手を詰められる自信もある。この辺は筋トレをしている人が「いざとなったら上司を殺せる」とメンタルが強くなる心理に近いかもしれない。

 

だが、たとえばあなたが会社から命ぜられて、毎日自分のアカウント名で検索するならどうだろう。そこに「あいつほんと嫌い。死んでほしい」なんて100件以上書いてあったら、少しは傷つくんじゃないだろうか。ましてやフォロワー数で承認を得ている、SNS依存者にとってそれは大変しんどいだろう。

 

承認される場所を死守するため戦略的ではない行動もとる

SNSに限らず単一の承認手段へ依存してしまうと、そこを死守したいがあまりに他人を傷つけたり、犠牲にすることもある。ぱぷりこさんの最新刊『妖怪男ウォッチ』では、恋愛で承認されるために女性を犠牲にする例がある。

 

(恋心の搾取地主は)男としての自信や愛情に飢えているため、「俺はこんなに女から好かれてるんだからすごい。あいつらは俺より社会的には成功しているけど、俺はあいつらよりモテているからすごい」と思おうとします。実はとっくに彼女がいても、キープ&キープ&キープ。

 

彼らは、自分が悪者になること、ヤリチンと言われること、浮気や二股など一般的に悪いと言われていることをしたがりません。嫌われるリスクを取れるほどの覚悟がないからです。「クリーンな自分」を維持するために制定されるのが、「セックスしてないからセーフ」「自分から付き合ってと言ってないからセーフ」という地主ランドの基本法。「だから俺は悪くない」とセーフティネットを貼る姿は、弱気な独裁者のようです。

出典:ぱぷりこ『妖怪男ウォッチ』pp.079-081

 

この男性が、女性を傷つけても批判を受け入れられないのは当たり前。彼にはそれ以外の承認を受ける手段がないからだ。キープしている女性が絶対国防圏なのである。

SNSで批判されたから死のうと思い詰めるのもまた、そこ以外に承認される場所がなければ自然だろう。他に行く場所がないのだから、アカウントを消すこともできない。

 

承認欲求を認めて、依存しまくるという選択

私も含め、ブログを公開して読んでもらおうと思っている人は、承認欲求が並より強いはずだ。沢山の人から愛されようと男性へつい媚びてしまう人も、女性をキープして安心する男性も。

 

人は何にも依存せず生きることなどできない。だが、依存する矛先を増やすことはできる。例えば私はネット、家族と友人から承認されている。SNSを完全に絶つことはないだろうが、今のアカウントを消してもまた作ればいいやくらいに思えるのはそのためかもしれない。

 

また、承認欲求の依存先以外でも方向性を増やせば炎上で心が折れたりはしない。

フォロワーが増える快感は脳が与える報酬としての快楽である。そして報酬には以下のグループがあると言われている。

 

感覚的報酬:生理的欲求に近いものを満たすことで得られる快感

物理的報酬:欲しいものを手に入れる快感

社会的報酬:承認欲求を満たす快感

知性的報酬:知的好奇心を満たす快感

 

つまり、承認欲求を満たす快感は数多くある報酬の一部に過ぎない。そして社会的報酬が全く得られないストレスは物理的欲求が得られない以上につらいとも言われている。逆に言えばネットや恋人の承認に依存している人は、何か欲しいものを手に入れれば似た快感を得られることとなる。

 

先ほど挙げた北条かやさんの消費は脂肪吸引など、なんだかんだ承認欲求、それもネットのそれに結びついている。そこで「ネットなんてクソくらえ、私は道端で100人からナンパされてみせる」と別のグループから承認欲求を得たり、好きな買い物をしまくったらスッキリするんじゃなかろうか。 

報酬を得られる場所を1つに絞りすぎると、そこがダメになったとき心が折れてしまう。だから依存は、しまくったほうがいい。ありとあらゆる方向へ、少しずつ。

 

最後に、脳性まひを患いながら小児科医でもある熊谷晋一郎さんの言葉を引用させていただき終わりとしたい。

健常者はさまざまなものに依存できていて、障害者は限られたものにしか依存できていない。依存先を増やして、一つひとつへの依存度を浅くすると、何にも依存してないかのように錯覚できます。“健常者である”というのはまさにそういうことなのです。

 出典:自立は、依存先を増やすこと 希望は、絶望を分かち合うこと

 

 

「妖怪男」を分類して悪・即・斬している本。 恐ろしいことに全文書下ろしだった。

妖怪男ウォッチ

妖怪男ウォッチ

 

 

販促です。笑 恋愛で承認欲求を満たしすぎている方へ、自立できるエクササイズをお届けしています。

恋愛障害 どうして「普通」に愛されないのか? (光文社新書)

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