トイアンナのぐだぐだ

まじめにふまじめ

2019年のGoogleのアルゴリズム更新でオウンドメディアとライターに起きていること

2019年、Googleは検索アルゴリズムの大型アップデートを行った。

私はSEOの専門家ではないが、ライターはメディアから依頼されて原稿を書くから、自然とメディアの増減や依頼内容の変化で風向きを感じられる。

 

まず、今年は誰もが知る大型オウンドメディアの閉鎖が相次いだ。

 

*輝いていたかつてのオウンドメディアたち*

ぐるなび みんなのごはん

Rettyグルメニュース

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アリシー | 自分をスキになるって、意外とカンタン。

CAMPANELLA [カンパネラ]

 

この中の複数メディアで執筆させていただいた経歴もあり、つまり私の力不足も相まってこれらのメディアは更新停止・閉鎖を選んでしまった。愛したサイトが閉鎖するのは切ない。申し訳ない。本当に。

 

ところが、オウンドメディアはオワコンなのか? というと、全然そんな気配はない。キリンビールnoteでオウンドメディアを始めたり、リクナビが内定辞退率を情報漏洩したショックで学生の4割が「使用を抑える」と大手ポータルサイト離れを起こしたため、各企業で採用ページのメディア化が促進されたりと、オウンドメディアはむしろ芽吹いている。

 

だが、オウンドメディアはGoogleによって大きく変わろうとしている。具体的には、量より質を担保する設計に変わろうとしているのだ。

 

Googleがぶち込んだE-A-Tのインパク

 Googleの大型アップデートでも最も重要なのがE-A-Tだろう。E-A-Tとは「Expertise(専門性)、Authoritativeness(権威性)、 Trustworthiness(信頼性)」の略を指す。つまり、専門的で、権威があって、信頼できるサイトは検索順位の上位に来る。そして逆に、雑多なことを書きすぎて何メディアかわからず、業界で権威がなさそうで、信頼性の低いサイトは検索順位が下がる。

 

これまで、オウンドメディアは文字単価0.1円の安いライターに記事を大量生産させ、あとは権威のあるサイト(自社のコーポレートサイトや、Wikipediaなど)からリンクをばしばし貼ればよい、という雑多なつくりをしたものも多かった。

ところがこれからは、どれほど専門性の高いデータを参照してコメントしているか、特定分野にこだわったサイトか、執筆者がSNSや社会でどういう評価をされているかが重要視される。ライターのSNSアカウントはもちろん、学歴まで分析対象となっている可能性があるという。

結果ライターに何が起きるかというと、単価が安い何でも屋的なライターが採用されにくくなった。そして「旅行」「サウナ」など専門分野を持っていて、SNSでフォロワーがいて、しかも炎上ではない純粋なファンが多い人が書いたほうがE-A-Tの観点から検索で圧倒的に有利となったのだ。

 

これを知った瞬間に思った。

ヨッピーさん過労死すんじゃね?

twitter.com

 

余計なお世話だった。もう少し一般化しよう。ライターには以下2つの変化が起きている。

 

1.信頼性がありそうなライターに案件が殺到

これまで、ライターの信頼性とは「連絡がつくこと、締切を守ること」などが中心だった。しかしこれからは、Googleに弾かれないような専門性、権威性、信頼性のある振る舞いが求められるかもしれない。

 

まず、ライターの中でも専門分野を明記する人は少ない。依頼があれば何でもやります、というライターが多いだろう。

しかし、SNSであれnoteであれ、同じテーマで発信したり、似たメディアに多数書いている専門性の高いライターがこれからは検索流入の意味からも、そしてライターにつくファンを惹きつけるコンテンツを書け、結果的に売れるからこそ重宝されていく。

 

また、これまで賛否両論を超えた「炎上上等」でやってきたライターはしんどいかもしれない。フォロワーの数ではなく専門性や信頼性で判定されるなら、批判ばかりが目立つライターは不利になりうるからだ。

 

特に巷の情報商材では「最初にフォロワーをつけるためには、SNSの有名人に極論で喧嘩をふっかけて反論させろ」というテクニックが喧伝されていた。端的に言ってカスだが、その手法は信頼性を損ねるため、ライターを目指すなら望ましくないだろう。

 

2.順位の落ちたオウンドメディアの大掃除が始まった

そしてこれまでオウンドメディアで文字数が少なく、大量の記事で検索キーワードを埋めてきた媒体は順位をどんどん落としている。

 

また、資金力のないメディアも瀕死だ。専門性の高いライターは単価も高い。今まで1本1,500円で書いてもらえた記事が何万円、時には10万円を超える。専門性のしっかりある記事は文字数も増える傾向にあるのでますますお高い。

 

メディアを復活させるためには、これまで作った薄い記事を削除して、信頼できるライターを探し、高い単価でメディアを再建せねばならない……結構なコストである。

そこで悲鳴を上げたメディアが何をするか。まずは、これまで外注ライターを手配してくれていた広告代理店に泣きつく。しかし広告代理店の内部には専門性の高いライターがいない。また、これまで薄い記事を大量受注してきたタイプの代理店は、メディアの専門性を高める方法もよくわからない。

 

そうなると、専門性の高いライターを探して「企画から執筆まで全部やってください!!」と丸投げメディア大掃除案件がそのまま降りてくる。ライターは信頼性の高い同業者に詳しいし、最悪原稿を自分で書けてしまうからだ。

 

Googleの余波でライターが過労死する珍現象に

……そんなこんなで、私は今、2つのオウンドメディアを担当している。具体的には信頼性を損ないかねない過去記事のお掃除、ターゲット読者の選定、響くテーマの調査、必要な記事のリストアップ、信頼できるライターの手配、締切までの管理。マーケターとしてやってきたことの繰り返しだから楽しい。

 

周りの信頼できるライターもそんな感じで、多かれ少なかれメディアを任され、ディレクションをしている。ライターという職業とは何だったのか。もはや別の事業である。

 

Googleアルゴリズム変更で、オウンドメディアが瀕死になった。そして改善策として専門性の高いライターがディレクターになって、参加している。ところがディレクションをしているライターは執筆もするから過労死寸前。風が吹けば桶屋が儲かる的な流れで、特定業界に詳しいライターはなぜかディレクターになりつつあるのだった。