トイアンナのぐだぐだ

まじめにふまじめ

新型コロナの助成金はフリーランスを救わない…「雑所得」で確定申告する人の落とし穴

断言しちゃう。

確定申告は、フリーランスの99%が嫌いな作業だ。

 

ざっくり説明すると、フリーランスの確定申告は「このお金は〇〇の用途で使いました」「これは経費です」といった内訳を1年分全部区分けし、税務署に提出する作業だ。

確定申告をやらないと税務署から「払おうね。さもないとお家の家具とか差し押さえちゃうからね」という恐ろしい連絡が来る。チュートリアルの徳井さんが経験したことだ。

 

 

確定申告は「おまえは去年食ったパンの枚数をおぼえているのか?」聞いてくる

1年間、ATMから引き出した5,000円から、ペン1本の代金に至るまでぜーんぶ区分けするのだ。考えただけでうんざりするよね。

しかも区分けは「ペン代」とか適当なラベルを貼ればいいんじゃなくて「1人5,000円以下の飲食費は会議費で、それを超えたら接待交際費」とか細かく会計用語で決まっているんである。課税する側の目線に立てば当たり前だが、やってるこちらは泣きそうだ。

 

  • えっと、成田空港からスーツケースを宅急便で送った費用は?(荷造運送費)
  • 雑誌に載るためにヘアサロンで髪を整えた費用は?(広告宣伝費)
  • 自分の本を手売りするために出版社から購入した場合は?(仕入高)

※ 誰がどんな用途で申告するかによって区分け(勘定科目)は変わります

 

などなど、いちいち調べながら記入せねばならない。やっても売上が上がるわけではないし、クリエイティブ職や職人は基本的に会計が苦手。初めてすぐに泣きを見て、直感的に確定申告できちゃうサービス、freeeに命を救われた人も多いはずだ。私もその一人である。

 

……と、いうのはごく一部の話だったらしい。

 

フリーランスのなかで結構な人が新型コロナウイルスの持続化給付金で対象外になっているらしい

新型コロナウイルスの影響で売上をズタズタにされたフリーランス

それを救うべく、経産省持続化給付金」を始めた。昨年より50%以上売上が減ってしまった人を、最大100万円(法人は200万円)まで支援する制度だ。このタイミングでの100万円は、正直とってもありがたい。

 

というわけで早速申請に走るフリーランスたち。だが、そこに落とし穴があった。

「雑所得」「給与所得」として売上を申告してきたフリーランスが、給付対象外となったのだ。

 

f:id:toianna:20200520031841p:plain

確定申告における雑所得と事業所得の違い

 

「事業所得」「雑所得」って?となる人が大半だと思うので、簡単な違いを書いた。サラリーマンであっても年20万以上の給与以外の収入があるか、年収2000万円以上の方は確定申告せねばならない。でも、そういう人は経費をこまごまと計上することはない。経費は勤め先の会社で精算しているからだ。

というわけで、「雑所得」で申告する人はあまり経費を計上しないし、税務署もそこまで突っ込んでこない。だが、個人事業主として売上を上げた人は「事業所得」でこまごま経費を計上し、申告せねばならない。税務署が突っついてくる可能性も高い。

 

え、いちいち経費計上? ぶっちゃけ無理。だったら確定申告なんかしない。そしたらどうせいつか税務署から連絡来るでしょ? いいよもう、利息でも何でも払うから。

という人が、大量にいたらしい。気持ちは分からんでもない。

 

新型コロナウイルスの影響を最も受けているはずの飲食店の事業主が給付対象外に

事業所得(フリーランスとしての所得)がある人で申告漏れがあった職業ランキングは、キャバクラ、風俗、不動産代理仲介、システムエンジニア、機械器具・部品修理、焼肉と続く。

そのへんの飲食店やエンジニア、不動産屋さんたちがボロボロ確定申告でミスっているわけだ。エンジニアを除くとITリテラシー無関係にできる業務だから、freeeどころじゃないのが分かる。

……で、こういう方々に税務署は「だったら、雑所得でもいいから申告してくれ!」と窓口で勧めていたようなのだ。

 

例年なら、「雑所得で申告すると、税務上フリーランスとして扱われなくなる」なんて言われても「へー」としか思わない。楽になるならそれでいい、という人が多かっただろう。だが、今年は大問題が起きた。

新型コロナウイルスフリーランスへ向けた給付金は「事業所得」でこまめに確定申告していた人だけが対象だったのである。

 

いやいや。まてまて。

 

もちろん、確定申告は大事だよ。私だって家具を取られたくはないよ。ちゃんと税金も払いたいし。ただ、簿記が苦手な人へ雑所得での申告を進めてたの、窓口のみなさんじゃないですか。それでくいっぱぐれたら、給付対象外っておいおい。

 

結局給付は「窓口でのネゴ勝ち」状態になっているもよう

というわけで、抗議の署名が3万人以上あつまっているが、現状で政府の動きはなさそうだ。

マイナンバーができたとき、「税金を自動計算し、12か月に当分して銀行から引き落としてくれるなら、私はその分野の個人情報とか全部提供していいです」って署名捺印できるなら、いくらでもしたってフリーランスは結構いると思う。

それが人権的にどうかはさておき、税務上は自由から逃走しちゃいたい人は、大量にいたはずだ。

 

いま一番ひっ迫している飲食店、バー、ミュージシャン、演劇関係の方はペーパーワークから比較的遠いところにいるわけで。帳簿を手書きにしている人とか、まだまだいるのだから。

 

……という方に朗報なのだが、どうやら「だって窓口で雑所得にしろっていったの、あなたじゃないですか」とネゴれば、申請受付してくれる事例が増えているらしい。

税務署の皆様にはお疲れ様としか申し上げようがないが、がんばれ、フリーランス

 

 

 めちゃくちゃ役に立つ本なのでフリーランスは買ったほうがいいです。