トイアンナのぐだぐだ

まじめにふまじめ

「名ばかり彼女、実質セフレだった」悲劇がアラサー女子に起きている

「酔ってうっかり関係を持ってしまった」という話、嘘みたいだがたまに聞く。寝ぼけた状態で「関係持っちゃったし、私たち付き合おっか?」と聞かれて「あ、、うん、そうだね。そういうことにしよっか」と言ったが最後、女性は「彼女」の地位を手に入れ、facebookのタグ付け、友人への紹介、親との顔合わせ……と怒濤の結婚ストリートを牽引し始める。「俺は結婚とかまだ考えたくないのに、彼女が怖い」と嘆く男性たち。


こんな書き方をするとまるで男性は美人局に遭った被害者のようだが、公平に物事を見るためにも女子サイドとの対話も再現してみた。

「彼と付き合って1年になるんだけど、共通の友人に付き合ってることを言ってくれないのね」

「恥ずかしいってこと?電撃婚希望なのかな」

「それに、私に隠れて合コンしたり、女子と2人きりでご飯もしてるのね」

「(彼氏が合コン行くことはオッケーな彼女も結構いるし)判断に困るね」

「あと、私の誕生日に男友達と飲みに言っちゃって……」

「あり得ない!」

ひとしきり共感モードで一緒に怒ったり嘆いたりして、解散してからふと思った。

「あの子、《名ばかり彼女》じゃなかろうか?」


友人に紹介してもらえない、彼女に黙って合コンへ行く、記念日を祝ってもらえない……という恋愛相談はよくある。それぞれの相談は愚痴を装ったノロケであることも多く「はいはい良かったね」で済ませていい。

だが「彼女として蔑ろにされている」エピソードが続くときは要注意。「名ばかり彼女」になっている可能性があるからだ。

 

アラサー男子は「付き合ってといわれたらとりあえず承諾する」「でもこの子と結婚するつもりはない」と考えながら付き合うことが結構ある。「まだ結婚は意識していないが、彼女がいてイチャイチャできる分には幸せ」ということだ。

それだけなら時が熟するのを待てばいいのだが、往々にして「まだ結婚したくない」男子に話を聞くとこういうことが起こる。以下は男子の恋愛相談から書き起こしたものだ。


「彼女が、怖いんだよね」

「どういうこと?」

「結婚、迫られてて」

「年齢的にはアラサーだし、結婚の話題も出るんじゃない?」

「うーん、俺はその、押し切られて付き合っただけだから……正直今は結婚とか考えられないし」

「今・目の前に聡明でおしとやかで料理上手な長澤まさみが出てきたら結婚する?」

「絶対する」

このように男性の「今は結婚とか考えられない」は「こいつとの結婚は考えられない」の類語にすぎず、気に入った相手なら今すぐ結婚したくなるものである。

ではなぜ男性が「今は結婚したくない」という言葉で逃げるかといえば「彼女はいるけど結婚はしたくない相手で」と断定したが最後、女性陣から「責任取りなさいよ!」と火炎放射をくらうからだ。

逆に女性が「彼氏と付き合ってるけど、結婚は正直無いから別の候補探し中なんだよね~」と言っても「貴重なアラサー男子の時間を使うなんて!」と男性陣から責められることはまずない。男子の「今は結婚を考えられない」発言は集中砲火を避けるための生きる知恵である。


だが彼女側はそう思わない。彼が「彼女としてならいい相手だから付き合っていたいな、でも結婚相手は他に見つけるね」なんて言おうものなら、結婚に焦る女子からすればセフレにされているのと同じようなもの。

次第に「私は彼女として丁重に扱われていない」「本当に彼女なんだろうか?」という疑問を抱く。女性の定義で彼女は「将来へ責任をもつ関係」だからだ。女性にとって付き合い始めた時点で、愛は契約なのである。

 

女性は男性に契約を履行してもらうため、つまり将来を意識させるために「親に会わせる」「facebookにタグ付けして関係を公にする」と、徐々に荒っぽい行動を取るようになる。これが「ラクに彼女と付き合いたい」だけの男子には脅威に写る。

最終的には男性の感じる面倒くささが「ラクな彼女と付き合い続ける」メリットを上回り「束縛する怖い女とは別れて、優しい次の彼女と結婚するわ」と言って名ばかり彼女、実質セフレ女子を損切りする。そして切られた彼女は「やっぱり私以外の相手がいたのね」と憤怒し、事の顛末は共通の友人に広がっていく……というのが、全容である。


このタイプの恋愛に生まれる悲劇は、双方が被害者意識を持ってしまうことだ。

「やっぱり女は怖い、俺の結婚意欲を考えもせずに迫ってくる。(結婚前提でなきゃ付き合うつもりは無いと言ってくれれば、最初から付き合わないのに)」

「やっぱり男はひどい、彼女と言いながら結婚もせず他の女に逃げる。(私はセフレだと言ってくれれば、別で結婚相手を探せたのに)」

アラサーの恋愛は、対話されない( )の前提部分を語らないがゆえに傷つけあい、双方被害者にしてしまうことがある。そして( )の部分をお互いが自由に語れるようになるには、男女共に「結婚と真剣な恋愛が無関係なこともある」と認められなくてはならない。だが、まだ世間の恋愛結婚至上主義は強い。「愛しあう関係は結婚に繋がるべき」という脅迫めいた社会のプレッシャーこそが、女性を焦らせ、男性を恐れさせている。

「この愛は、結婚と関係ないよね」「そうだね」と笑顔で会話できるようになるために、あと何十年が必要だろうか。そういう社会が訪れたら初めて、私は世間の結婚が愛の延長線上にあると信じられそうだ。