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トイアンナのぐだぐだ

まじめにふまじめ

20代男性の4割超に交際経験がない時代と「恋愛障害」

6/16(木)発売、トイアンナ初の紙による著書『恋愛障害―どうして「普通」に愛されないのか』(光文社)の一部を公開いたします。

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データで見る恋愛障害

自分を傷つける恋愛ばかり繰り返してしまう「恋愛障害」とは、実際にどのような方が当てはまるのでしょうか。ここでは簡単に、恋愛障害を抱える人やその予備軍の方が持っている共通項をデータで読み解いていきます。

リクルートブライダル総研の「恋愛・婚活・結婚調査2015」(*1)からは、二〇代男性の約四割と、女性の約二割に「交際経験がない」という事実が明らかとなります(図1)。

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また、大手結婚相手紹介サービス、楽天オーネットの「第 21 回 新成人意識調査」(二〇一六年)(*2)によると、新成人の約半数に彼氏彼女がいた一九九六年と比べ、二〇一六年は二六・二%と半減しています(図2)。

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これでは「恋愛障害」どころか「非恋」の時代とでも考えたくなりますが、詳しく見ていくと実情は異なります。「モテたい」と思っている新成人は全体の六割にのぼるのです。しかし七割が「異性とのコミュニケーションを苦手」としており、過半数以上の方が「モテたいけど、思うような恋愛ができない」もどかしさを抱えていることがわかります

この傾向は若者だけのものではありません。リクルートブライダル総研「恋愛観調査2014」(*3)によると、恋人がほしいと答えた二〇代~三〇代の独身男女は約六割。さらに二〇代男性の約三割、二〇代女性の約半分が、「振られるリスクを思うと告白したいとは思わない」(仲のいい友達のままでもよい)と回答しているのです(図3)。

 

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このデータからは、「恋愛はしたいけど、傷つきたくない」ムードが、世代を問わず広がっていることがわかります。

「傷つきたくない」気持ちは誰にでもある感情でしょう。でも、「傷つくくらいなら恋愛をしない」という選択は、ずいぶん思い切った「傷の避け方」だと思います。たとえるなら、溺れるのが怖いから、海水浴には絶対行かないと言っているようなものです。

ではどうして、私たちはここまで傷つくことを恐れるのでしょうか? 内閣府の調査(*4)によると、現在の一〇代から二〇代で「自分自身に満足している」と答えている日本人は約四六%にすぎず、これは他国よりも著しく低い値です(図4)。

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「自分自身に満足している」若者が半数を切っていることは特筆すべきでしょう。また、同調査では、約半数が、「自分は役に立たないと強く感じる」とも答えています。

こういった自尊心の低さが、恋愛への態度にも反映されているとは考えられないでしょうか。自分のことが好きではなかったら、好きな人に自分が好かれるなんて大それたプロジェクトに着手できないのは当然です。セールスポイントがない自社製品を、無理やり営業させられるようなものですから。

 

「恋人がほしい人」に焦点をあてたデータも調べてみました。「恋人がほしい理由」を調べたモッピーラボの調査(*5)では、「寂しいから」「甘えたいから」がツートップになっています。自分のことは肯定できない一方で、寂しさを埋めるために恋人を求める二〇代~三〇代の姿が浮かび上がってきます。

@nifty何でも調査団」によると(*6)、未婚男性の半数が、未婚女性の一〇人中六人が「愛するより愛されたい」と感じており、本書の冒頭の「どうして私は愛されないんだろう」という苦しみに呼応しているかのようです。

 

ここまでの調査をまとめると、現代の二〇代~三〇代の男女は、「自分のことをそこまで好きではなく」、「寂しさを埋めて自尊心を満たすために、誰かから愛されたい」けれど、「積極的に行動して傷つきたくはない」という像が見えてきます。

 

私が受ける若い世代の恋愛相談とも、調査結果は一致しています。彼・彼女らは愛されたいと願うばかりでどのように相手を愛するのか、大切にするのかについて考える余裕がない方が多いのです。

そのような場合、私は「あなたが一方的に愛されたいだけで、相手は彼じゃなくてもいいんじゃないですか?」と質問してみます。最初は「そんなことないですよ」と否定していた女性も、「彼じゃなくてもよかった。誰かに寂しさを埋めてほしかった」と打ち明けてくださることがあります。

 

愛情をたっぷり受けて育っていない場合

では、「自分を愛してくれる人」はどのようにして見つけ、選べばいいのでしょうか。精神医学の分野では、人に対する愛情の抱き方には幼少期の影響があるとされます。

愛情をたっぷり受けて育った人は、その愛情を他人に与えられる一方、愛されていないと感じて育った人は、自分の恋愛でも愛し方/愛され方がわからず苦しむ──。つまり、あなたは、子ども時代に受けた愛情の形や接し方を、知らず知らずのうちに現在の恋愛に投影しているのです。

 

たとえば何かで失敗した時に、親から過度な叱責を受けることが多かった人は自己主張ができず引っ込み思案になっているかもしれません。あるいは、他人の失敗に対し不寛容で、相手を激しく叱責(しっせき)し非難しやすい人になっているかもしれません。

また、親や周囲の人から、

「なんてダメな子なの」
「お兄ちゃん(お姉ちゃん)はそんなことしなかったわよ」
「可愛くない」
「なぜそんなにできないの?」
「あなたを産まなければよかった」

といった言葉を日常的に浴びせられてきた方は、愛されたいがために相手に過剰に媚びるクセがつくこともあります。そういう人は大人になってからも同じ行動を取りがちです。

 

親から否定されたことはありませんか

こう書くと、「私はそこまでじゃない」と思われるかもしれません。ただ、「親がふと言ったことが今も引っかかっている」という方は多いのではないでしょうか。たとえば、次のような言葉です。

「こんな人とは付き合っちゃダメ」
「お父さんみたいな人はやめておきなさい」
「男の人はどうせ浮気するものだから、甲斐性だと思って諦めなさい」
「いい年になって料理もできないなんて、誰もお嫁にもらってくれないわよ」
「大して美人でもないんだから、えり好みしないの」

 

直接的ではなくても、親からの言葉は大きな影響を与えます。

ある女性は、「あなたはお姉ちゃんに比べて手がかからなくて助かるわ」と母親から言われたことで、「私はお姉ちゃんより愛されてないんだ」という寂しさを感じたと言います。彼女は、学生時代から自暴自棄なセックスで寂しさを埋めることを覚え、現在も苦しんでいます。

サイコセラピストの西尾和美さんの著書『機能不全家族──「親」になりきれない親たち』によると、親からの愛情をきちんと受けることができなかった「機能不全」の家庭は約八割にのぼるそうです(*7)。

 

そしてこれは、親との関係が良好ではなかった方だけに当てはまるのではありません。たとえば、親との関係は良好であったものの子ども時代の過酷ないじめによって自信が持てず、なるべく人と関わらないようになっているケース。初めての恋愛でパートナーからひどい扱いを受けて異性恐怖症に陥ったり、過度に相手へすがるような行動を取ることもあります。

人間関係とは、双方の行動と応答によって構築されていくものです。自尊心が低いために、いつも「下から目線」で他人に接する人は、自ずと実際の立場も下になっていきます。一方、健全な自尊心を持つ人は、相手と対等なパートナーシップを築く行動を取ることができ、必然的に、相手とは対等な関係が生まれます。

 

そう考えると、恋愛障害の方々はいつも不幸な人間関係を築くことになるのです。ですから、一般の「パートナーと対等な関係を築けている(恋愛障害でない)人々が普段取っている行動パターン」を知り、自分との違いを知った上で、少しずつ変えていく必要があります。

 

そのプロセスをまとめると、次のような流れになります。

①これまでの他人と接してきたパターンを把握する
②他人と対等なパートナーシップを築けている人の行動パターンを知る
③自尊心を取り戻していきながら、徐々に②の行動を取るように努める

 

『恋愛障害―どうして「普通」に愛されないのか』(光文社)では、そのための考え方と具体的方法をお伝えしていきます。また、そもそも恋愛障害とは何か? (男女別に)なぜ恋愛障害に陥ってしまうのか? その解決策は? までに渡って詳しく解説していきますので、興味のある方はぜひご覧ください。

 

恋愛障害 どうして「普通」に愛されないのか? (光文社新書)

恋愛障害 どうして「普通」に愛されないのか? (光文社新書)

 

 

<参考資料>
*1 リクルートブライダル総研「恋愛・婚活・結婚調査2015」五〇〇〇名、二〇一五年
*2 結婚相手紹介サービス 楽天オーネット調査「第 21 回 新成人意識調査 2016年新成人の恋愛・結婚意識」六〇〇名、二〇一六
*3 リクルートブライダル総研「恋愛観調査2014」五〇〇〇名、二〇一四年
*4 内閣府調査「平成 25 年度 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」一一七五名、二〇一四年
*5 モッピーラボ「 20 代・ 30 代の恋愛事情に関する調査」一一七八名、二〇一一年
*6 @nift何でも調査団「恋愛・結婚についてのアンケート・ランキング」二一八一名、二〇一二年
*7 西尾和美『機能不全家族──「親」になりきれない親たち』(講談社、一九九九年)