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トイアンナのぐだぐだ

まじめにふまじめ

女性をモノ扱いするチャラ男の部屋には村上春樹の本が置いてある不思議

 遊び人の部屋というものは、いつ見学しても飽きないものである。

私はチャラ男の女友達ポジションになることが多い。 基本的に「女性は狩るもの」と考えている彼らは、ターゲットである女性へ決して「獲物」の話をしない。だが女友達カテゴリに入れば話は別。私はチャラ男から会ったこともない美女の氏名、職業、ピロートークの内容から顔写真までを戦歴として聞かされてきた。チャラ男は「最近の獲物」を友人間で近況として共有する。(この性質を知ってから決してチャラ男と寝ないと誓った)

 

私は彼らと宅飲みもする。美貌や才能でモテる少数派のチャラ男を除き、努力型の遊び人は広くてキレイな部屋を持っていることが多い。女性の数をこなすにはホームパーティからコトを済ませるのが、一番安くて手っ取り早いからだ。

家にはナンパ用語でアルファメール(Alpha Male)感、つまりイケてる男っぽさを出すため『この人、知的なのにオシャレで素敵』と思わせるような小道具が並ぶ。ワインセラー、金融関係の専門書、タジン鍋プロテイン。その中でも必ずといっていいほど本棚に鎮座しているのが村上春樹の本である。でも、村上春樹を家に置いたら、モテるか?むしろ「いい年して村上春樹って、お前の感受性は弱酸性ビオレかよ」とナイーブさをバカにされないか? 

 

そう質問するとチャラ男たちは口をそろえて言う。「彼の文学性が好きなんだよね」「気づいたら集めてた」「なんか共感しちゃって」その他の金融専門知識をひけらかすために買ったお飾りの本とは違い、村上春樹は「好きだから読まれている」のだ。

 

村上春樹先生をバカにしたいわけではない。私も『納屋を焼く』『羊をめぐる冒険』は学生時代に読んだ。霞を噛むような雰囲気や、無機質な文体は面白い。辛いのは、どれを読んでも登場するヒロインが金太郎飴のように似ていて、あだち充作品ばりにキャラクターの混同が起きること。

その上「僕は女を抱かなくちゃいけないんだ。そしてそれは今じゃなきゃいけない。やれやれ。僕はため息をついた」なんて文体でコトが進むので、性欲に負けただけのことを何カッコつけてんだ!と、笑ってしまうのが大人の読者だろう。村上春樹は世界中の中二病界をリードする大先生であり、大人の読み物ではないのだ。

ではなぜ《10代の文学》にチャラ男は年代問わずのめりこめるのだろうか。

 

その理由は「金太郎飴のような女性キャラクター」にあると私は見ている。 チャラ男は女性をモノ扱いする。彼らにとって女性は「狩りの対象」であり、ナンパは「Sランク5人ゲットだぜ!」「これで読モをフルコンプ」といったゲーム的成果で表現される。

彼らは女性の内面に興味を持たない。もし彼らが女性に深く共感しながらチャラ男を続けていたら精神的に病んでしまうだろう。肩書きと年収で男性を判断する女性が「この人、今までミーハーなだけの女性が寄ってきたり、職業柄偏見を持たれて苦労されたのよね……」と共感に涙しながら婚活しないのと同じだ。人間関係を数でこなそうとするとき、相手への共感性はノイズとして除外されるのである。

 

彼らはナンパゲームの初期こそ出会いに胸をときめかせるものの、次第に攻略法をつかみ、ただの作業ゲーとして経験人数を増やしていく。【隙のある女性へ声かけ → 愚痴に共感しての盛り上がり → 2軒目でちょっとエロい話 → 家で軽く寝ていきなよ。】クリアしたマップを何度もプレイするような退屈さ、でもこれ以上の暇つぶしがないからと延々ナンパに課金する男子。それがチャラ男の実態だ。

 

せめて特殊性癖でもあれば「カードをLv.99に育てまくる重課金プレーヤー」のように同じゲームを楽しめるだろう。だが、彼らは学生時代にモテなかった苦しみを補填したいだけの普通男子なので変態にはなれない。そもそも、性欲だってそこまで強くない。あるのは底なしの承認欲求だけである。そして「誰かに承認されたいなぁ」とひとりごちながらするセックスは、確かに女性キャラへ一切共感せずに「僕」目線だけで話が進む村上春樹の世界観と親和性が高い。

 

そして40代が来た。老いが体に現れる頃だ。友人は言った。

「この年にもなって女の話をするのはダメなんだ。誰かがそう決めたんだと思う。窮屈だけれどね。」

そう。初老には初老のやり方があるのだ。みんなが同じ歩き方をして、家庭を作り、子供の声であふれている。 わからない、といった風に僕は首を振った。

「何故僕は同窓会に誘われなくなったと思う?」

「はっきり言ってね、女の話は大学で卒業するものだったんだ。 「遊び人は人生が20年遅れている」「さっさと女性を自分と同じように共感されるべき相手として見ろよ」と伝えても 、お前たちは『モテてる俺たちをひがんでるのかな?』と目を丸くするだけだった。」

はっきり言って、というのが友人の口癖だった。

チャラ男はそのことを40代になるまで気づかない。 奴らは大事なことは何も考えない。 考えてるフリをしてるだけさ。‥‥何故だと思う?」

「さあね。」

やれやれ。僕はそう思ったし、友人の顔もそう語っていた。

 

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