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トイアンナのぐだぐだ

まじめにふまじめ

就活生へ安易にベンチャーを勧める大人が多すぎてキレそう

キャリア 学歴・職歴

3月は就活解禁……という名の茶番である。経団連に参加している企業も一部は半年前から選考を進めている。3月に最終面接だけ残し「ルールは守ったよね?」と就活解禁から内々定を出す。採用スケジュールは業界によるから絶望することはないけれど、すでにレースの半分が終わっている。

 

と、知った学生は焦る。「就活は3月からって聞いてたのに、もう周りは内定者まみれなんですけど!?」と。それで就活に詳しそうな人を探す。私も外資就活ドットコムのスタートアップ期にノリで参加し数年、気付けばすっかり「就活相談に乗る怪しい大人」の一員だ。

しかしこのシーズン、学生から「ある相談」を受けることが多すぎてキレそうになる。学生へじゃなく無責任な大人へだ。

 

就活生:新卒こそベンチャーへ行くべきって○○さんが言ってたんですけど、大手を受けずベンチャーへ行くべきでしょうか?

 

私:その方はどういう背景からそうおっしゃったの?

 

就活生:これからの社会で大企業のスキルじゃ生きていけない。大企業だと裁量権もなくて下積み期間が長いから「どこでも働ける人材」になれない。ベンチャーで即戦力を身に着けてすぐ独立できる人材に育つべきだ、って。

 

頼む、この子の人生に責任取れないんだったら、そういう嘘をつかないでくれよ。

 

大きな裁量権や成長速度はベンチャーの専売特許にあらず

ベンチャーで働く人が「新卒からベンチャーへ入るべき」と言うなら話は分かる。優秀な新卒学生が欲しいからだ。それでも私の周りにいる真摯な採用担当者は、大企業へ行くメリットも見せた上で採用している。ベンチャーの創始者には大手企業出身者も多く、大手の良さを享受した経歴があるからだ。

ところが「大手には裁量権がない」「これからの時代は即戦力が必要」とベンチャーこそ至上と勧める人は、ベンチャーの当事者でないことが多い。というより就職活動すらしたことがない人がたくさんいる。就活をしたからって就活についてアドバイスできるようになるわけではないが、いくら何でも大企業を十把一絡げにレッテル貼りするのは無責任じゃないか。

 

大きな裁量権を持てるのはベンチャーだけではない。たとえば外資なら1年目から大きいプロジェクトが振ってくることも多い。広告代理店もすさまじく鍛えられるようだ。激務と引き換えにはなるが、大企業にだって裁量権の大きな場所はある。

それに、裁量権の大きさと成長スピードはあまり関係がない。「何も指導しないけど今日から君が責任者ね、はい頑張って」とブン投げられるより軍人・山本五十六のように「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」と指導したほうが成長は早いかもしれない。

ほとんどの人は放置されるより毎日褒められる方が頑張れるだろう。そういう意味では伝統的な大手企業の方がよほどあなたの成長へ寄与してくれるのではないか。

 

新卒からベンチャーへ行くメリットを享受できるのは上位1%

ただ、ベンチャーを推す側の論理も理解できなくはない。大企業の「成長」はあくまで社内における仕事の進め方に順応していくだけで「どこでも働ける人材」になれないリスクがあるからだ。

しかし企業が与えてくれるマニュアルなしで働ける人は、トップ1%くらいの優秀層に限られる。新卒からベンチャーで活躍できる条件を出すなら「たとえ会社が無くなっても自分の能力で起業・転職できる」学生である。これに該当する人間はそういない。

 

本来1%のトップ層にしかできそうもないことを「どこを受ければいいですか?」と焦るような学生へ言ってしまえば、ベンチャーへ入社してしまった挙句に会社が廃業し、路頭に迷う悲劇を生むだけではないか。少なくとも「誰かに勧められたからベンチャーへ入るべきか」と悩んでしまう学生へ向けていい言葉ではない。普通の人間が「どこでも働ける人材」を目指すなら、寿司でも握った方がよほど夢に近づけるだろう。

 

大企業は自分が無能でも守ってくれる

99%の就活生はフツーの人材で、むしろ就職後に自分は無能な人間だったと気づく可能性もある。そこで自分が無能だったとしても守ってくれるのが、大企業の名前である。

転職するにせよ新卒企業の名前は履歴書に一生残る。そして「こんなちゃんとした会社で勤めた経験があるなら大丈夫だろう」と信頼してもらえる。わずか4年で会社員を辞め、フリーランスへ転向した私ですらそうだ。

 

さらに日本社会に山ほどあるマナーをタダで教えてもらえるのは、まっとうな企業に属した新卒の特権でもある。「時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます」に始まり、先輩より早く帰る挨拶しぐさから飲み会の話題まで、大企業にはそれこそベンチャーを推す大人が軽蔑するプロトコルが山ほどあるだろう。

だが、ベンチャーへ就職したところで取引する相手はそのプロトコル集団だ。ルールを知らねば彼らを相手に金儲けはできない。反対にプロトコルを守るだけで、無能な人材ですらある程度仕事を回してもらえる。大企業は社名とマナー教育の2つであなたのキャリアを守ってくれる保険のようなものだ。

 

自分が社会のトップ1%として活躍する自信があるなら新卒でベンチャーに行った方がいい。だがもし自分が下位99%、つまり大多数の人間だと思うなら大企業を最初から切って捨てる理由はないだろう。自分がベンチャー向きかどうかは大企業や手堅い中小企業を受け、じっくり採用担当やOBGから話を聞いてから考えてもいい。大手は受けておこう。話はそれからだ。

 

 ***

 

こちらは裁量権が大きく成長できると言われる企業に所属し続けるリスクについて書いたもの。仮にベンチャーで成長したところで、果たしてそれが「どこでも働ける」人材と言えるのかも分からないのだ。

toianna.hatenablog.com

 

 

 

姉が新興宗教に出家したとき、彼女を助けてくれる人は誰もいなかった

ライフスタイル 時事ネタ

新興宗教へ出家した姉の話をしようと思う。

私が生まれたとき、姉は中学生だった。母は早期に離婚し、私の父と再婚した。だから姉と私では父親が違う。再婚相手の娘というとても微妙な間柄だったけれど、姉と過ごした時間はとても長かった。母が朝5時から深夜1時まで働くような人だったので、年端もいかない姉に私を預けていたからだ。

 姉は明らかに困惑していた。当たり前だ。中学生で恋愛なり何なりを楽しめる年齢だった。それを私の育児で台無しにされて、さぞ迷惑だったろう。

 

さらに母は姉の親権を放棄していた。というか厳密には父親も母親も親権を放棄したがったので、祖父母が育てていた。つまり姉は「母にも父にも見捨てられた」という自意識を持ちながら、父親が違う妹の私を育てていたのだ。人生ってこんなにひどい試練を人に与えうるんだろうか?

 

それでも姉はよくできた人で、不器用ながらも私の面倒を見てくれた。だから私は姉が好きだ。幼い私は彼女のバックグラウンドを何も考えず「いつも面倒をみてくれる人」くらいに思っていた。

そう、姉は「お姉ちゃん」ではなかった。離婚のせいで母方の実家から絶縁されていたからだ。再婚と私の誕生も相まって姉は親族から「存在しない子」となった。親族の集まりに招かれることもなかった。だから私は姉を「お姉ちゃん」として呼ぶことは禁止された。「そんなことして近所の噂になったらどうするの。笑われるんだよ、あそこの家は再婚だって」だから私は姉のことを〇〇ちゃん、と名前で呼んでいた。私も彼女が実の姉だと知ったのは10代になってからだ。

 

いろいろ噂になるし、田舎にいてくれない方が助かる。そんな思惑で姉は海外へ送られた。学費は当時バブル景気で儲かっていた母から出た。イギリスの高校と大学を卒業した姉はそのまま就職したが、不運にも就職先が続けて倒産したらしい。この当時の姉は荒れていた。伝聞でしか知らないけれど、母に包丁を向けて「あんたのせいだ」と対峙したこともあるらしい。そんな姉を新興宗教へ入れたのは母だった。 

「ここなら姉をどうにかしてくれるだろう」

「私が霊視した限りでは本物の神様がいる宗教の一つだから」と。

 

私の母は自分のことを神様だと信じている電波な人だった。だから新興宗教へ突っ込んだ行為ですら、姉から見れば霊とばかり向き合っている母が姉を気にかけた数少ない時期だった。「お母さんが私のことを見てくれた」と思った姉は新興宗教へ入った。(ちなみに姉へ宗教を勧めたくせに母は入信しなかった。そして会費も払わなかった。)

 

元来のマジメな性格が幸いして、姉はあっという間に出世した。そして数年後、私が同じように母から遠ざけられてイギリスの高校へ入ったときには出家していた。私は未成年の親戚だからと勝手に名前を書かれ入信させられた。

週に1度の祭事やボランティアに寒い時期の集中訓練。私は4年間、彼女の新興宗教へ晒された。信仰したことは1度もない。残念ながら私は体質的に偉い人の話を聞くと眠くなるので、教祖様の話を最後まで聞けずいつも爆睡してしまったのだ。

 

私も母とトラブルを抱えて人生でつらいときは何度もあったし、信じられた方が幸せだったかもしれない。けれどいくら母親が自分を神様と信じてるからって、反発して新興宗教に入るのは何か違うんじゃないか。それって親がクラシックの指揮者なのに嫌気が差してロックシンガーになるくらい傍目にゃ一緒に見えないか……というモヤモヤから解放されなかった。

 

姉の「もっと修行しろ、勧誘しろ」という推しは嫌いでしょうがなかったが、姉のことは好きなので黙っていた。けれど同じ信者から「あなたのお姉さんはすごいのよ。飛行機の隣の席に座った人も入信させたんだから」なんて言われると吐き気がした。やめてくれよ、そんな社会悪に近づくのは。新興宗教に入ってるからって、もっとゆるい信者にもなれるだろ。

 

本当は、彼女の両親が親権を放棄した時点で抱きしめてあげる誰かが必要だったんだろう。本当は、母親が電波じゃなかったら良かったんだろう。姉の就職先が倒産したからって「大丈夫よ、しばらくここで暮らしなさい」って言ってあげられる誰かがいたら。でも姉には何もなかった。当時は宗教以外の何も、彼女を助けられなかった。

 

そして現在、姉は宗教を通じて出会った夫と幸せに暮らしている。子供にも恵まれた。

もしかすると子供は2世として苦しむかもしれない。勧誘されて友人は離れていった。けれど姉に宗教がなければ、この年まで生きていてくれただろうか。宗教なしに姉が幸せに生きる道ってあったんだろうか? だから私は姉にかける言葉がない。ただ、勧誘されないよう距離を置いてたまにLINEするだけだ。

 

出家してもなお大御所芸能人にバッシングされる清水富美加さんへも、同じ辛さをひりひりと感じている。彼女が生きるすべって出家する以外他にあったんだろうか。社会に孤独な人のセーフティネットが宗教以外何もないなら、それって用意しなかった社会の、ひいては私の責任でもあるんじゃないか。

同じような人を「助けられない」と諦めるのは言い訳だ。きっとこれから同じように人生のどん詰まりにあった人を助けていける。そんな一縷の希望だけが、私をいま動かしている。

 

***

こちらは自分を神だと信じていた母の話。もういい年だから母を恨みはしないけれど、姉の人生を変えたことくらい謝罪してもいいんじゃないかと思う。

toianna.hatenablog.com

 

この記事を読んで、ずっと書かなかった姉の話を書こうと思った。新興宗教2世で同じ信仰を持てないのは苦しいと思う。と同時に、その親世代って宗教へ入る以外に生きる道はあったんだろうか。それを用意できなかった時点で、責任は社会全体にあるんじゃないかと。

menhera.jp

 

数年前に書いた母と姉の話。

toianna.blog.fc2.com

 

毒親との会話を書き起こして分かったけど「プラマイ」で考えてマイナスになる親もいるんだよ

ライフスタイル 時事ネタ

 

毒親について語ると、批判されることがある。中でも「毒親なんて存在しない。親は子を愛するものだ」と言われるのはしんどい。

 

けれど考えてみれば、普通の家庭に育った方に毒親と「ただ子供が親へ反抗しているだけ」の差は、想像しづらいのかもしれない。 だから一例として、親との会話を書き起こしてみた。父の還暦を祝うため半年前に海外旅行をした時の話だ。

 

母:見てみて、このお店すっごい丁寧にアクセサリーを作ってる!

私:そうね、きれいね。

母:感じるでしょう、あなたも。

「感じるでしょう」とは霊的なパワーを感じるでしょう、という意味だ。

母は自分が神だと信じている。宗教の信者ではなく自分が神だと。周囲に聖水と称して井戸水を配ったり、信者を集めて集会をしたりしている。そんな親に反抗的な私は狐憑きとされ、手を炎であぶるなど除霊の儀式を受けてきた。母は激高すると街中でも暴れてしまうので、私は妄想に付き合う。

私:そうかもね。

母:そうかもねって……!あんたねえ。ほら、この地域は足元にジャッキー(邪気)が寄ってくるから。あなたも背中にいるのよ、いまとりつかれてる。しっしっ。

と、私の背中をバシバシ叩いて除霊?をしていたが、すぐ飽きたらしい。「何かお腹空いてきちゃったあ」とへたり込んだ。

 

私:お母さん、今日はお昼を控えめにするって約束したでしょ? お父さんの還暦祝いにお店を予約してあるから。お昼食べると夜ご飯入らなくなっちゃうって言ってたよね?

母:そうだけどぉ、だってお腹すいた! 空いちゃったらしょうがないもん!

じゃあ、とカフェへ入った。母はパスタを注文したが「やっぱり食べたくない」と意見をひるがえしたので、私と父がいただく。

 

母:人様はねえ、生かされているの。それをこんな(母が頼んだパスタのような)他の動物を殺したものを食べるなんてあんたたちは汚れてるの。そうやって無礼を働くから、あんたたちは早く死んじゃうのよ。

ほら、私って同じことをお向かいの〇〇さんにも言ってたけどあの人聞かなかったじゃない。だから病気が見つかったじゃない? アドバイスするだけ無駄だったわ。〇〇さんってほんと失礼な人ね。やんなっちゃう。

私:そうね、お母さんの中ではそうかもしれないけれど、〇〇さんには通じないと思うからその話は家の外ではしないようにしようね。

母:いや、もう町中に言いふらしてやるんだから!

(お向かいさん、本当にごめんなさい……)私が心で謝罪していると母はすっくと立ち上がり、隣席へ向かった。どうやら母は日本人を見つけたようだ。

母:あなたたちどこから? ご家族?

客もギョっとしている。そりゃそうだ。海外で食事中に他の日本人から話しかけられたら驚く。

客:あ、えっと、関西からです……家族で。

母:そうなの、素敵ねえ。うちも家族なんだけど娘が使えなくって。旅行のガイドさせるくらいしか能がないのに私の行きたいところをちっともわかってくれないんだから……。

父:お母さん、さすがにそれは言いすぎじゃない。

母:あら、だって本当のことじゃない? 大体この子は感謝が足りないわよぉ、わざわざ海外まで親が来てやってるのにさ、ホテルと観光施設予約するだけって。なめてんの?

私:……さ、お母さん席へ戻ろう。

母:なによ、今更媚びたってあんたにあげるものなんかないよ。遺産はぜーんぶ〇〇ちゃん(親族)へあげるんだからね!!

私:お母さん、店内で大きい声だすのやめよう?……あ、本当にすみません。

日本人のご家族も、何かを察したのか笑顔でスルーしてくださった。ありがたい。

 

さて夜、やっぱりお腹が空かないから晩御飯は食べたくないという母を、せっかくレストランも予約してるからと連れ出した。

私:お父さん還暦おめでとう。

父:やっぱり家族で食べるご飯が一番だねえ。

母:あんたたちはいいわよね、そうしてつるんで、私をいじめて。お母さんが晩御飯食べられないのなんて分かってるんでしょ。それで無理やり夜に連れ出してさ。

私:さ、さ、お母さんワインだよ~。

母:ああ、おいしい。私ね、アンナみたいな子がいて本当に幸せよ。だってねえ、親と一緒に旅行してくれる子なんてなかなか世にいないでしょう。

父:そうそう。

母:(私の方を向いて)あ!! ねえ、アンナは呪われてるんだから、10歳で死ぬ運命なんだから、死ぬんだから諦めなさいよ?

私:おかげさまで、いま私はアラサーですよ。

母:それはあたしのおかげよぉ! ちゃんと木のお札に毎日お参りしてる? お母さんが〇〇〇〇のミコト様にお祈りして作ったんだから感謝しなさいよ?

私:(それ、私がもらって速攻捨てたやつだわ……)うん、大事に置いてあるよ。

母:今日もね、すごかったでしょう美術館にあったマリア様……すごいご先祖様が集まってね、ぶわぁーって。

そうそう、あそこにお祖父ちゃんも来てたのよ。でも悲惨な死に方をした親戚の〇〇さんは地獄にいるからまだマリア様には近づけなくてねえ……。

私:ささ、お母さんワインもう一杯。

母:ああ、ありがとう。でも地下鉄はすごいわねえ。もう足が痛くて。手がね、いっぱい伸びてくるのよ。私なんて妬まれちゃって。たかだか一流企業に勤めている夫がいて自立した娘がいるからって嫉妬されてるのよ、霊に。

でも私知ってるの。これはね、うちの信者さんだった〇〇さんが送り込んでる生霊なのよ。あの人のせいで携帯も壊れてね、この前。だから私も念を送って戦ってるんだけどねえ……。

 

母は酒乱だが勢いよく飲むと荒れる前に潰れるので、外で飲ませるときはあえてガバガバに注ぐ。しゃべるだけしゃべって眠りこけた母を前にして、父との食事が続く。

 

父:お母さんって、かわいいよねえ。

私:全く理解できない。今回の旅行は仕事だと思っているから付き添えてるけど、お父さんはよく耐えられるね。

父:理解できないことが魅力なんだよ。ただね……今回還暦で休みも取れたし初めて家のことをチェックしたんだけど、家にお金がほとんどなくてね。

私:あれ? 二人ともバブル期にかなり稼いでなかったっけ。

父:うん、でもお母さんが全部使い切っちゃってたみたい……。お父さん、再就職しなきゃいけないんだけどこのご時世だから厳しいでしょ。

 

過去の経験から直感した。この話、金をせびられるコースだ。

 

祖父母の援助で卒業した高校時代。大学の学費は「東に行くのはオーラが悪いから」と一度振り込んでくれた学費を貸しはがしされた。

世帯所得はあったから奨学金もおりず死ぬほどバイトしたあの日々。「学費は風俗で働けばいい」って言われたの、なかなかパンチがあったっけな……。

 

思わず懐かしい記憶を辿ってしまったが、親へ援助するつもりはなかった。こういうことを言い出すときは、本当は金があるのも経験則から知っている。

私:とりあえず旅行中の食事代は払うからさ。ホテル代も返してくれなくていいから。

父:いや、いいんだよそういうのは。

そういうのはいいから、私にお金を振り込め? でも、私には新しい家庭がある。大事な夫がいる。なによりその状況でのんきに海外旅行している親が信じられなかった。「いいからいいから」とご飯代を払い、同じような数日間を過ごし帰国した。

 

我が家の玄関を開けると夫が「おかえり~」とハグしてくれた。洗いたての服の匂い。私が帰ってくるからと慌てて掃除したのがわかるリビング。

今は、ここが私の家だ。

 

私は、親と和解している方だと思う

「毒親」といっても私は親と和解している方だ。年に1度は会っている。過去に傷ついたことはあったけれど、今の親から傷つけられることはない。

 

親へ感謝していないわけではない。クリームシチューを作ってくれたことがある。お金があるときは旅行へ連れて行ってくれた。美味しいお刺身を食べさせてくれたことがある。

でも、食べ物をもらえない日もあったし、酒にまかせて殴られてきた。儀式と称した暴力もあったし、父も母も親として未成熟すぎた。

過去を換算してプラマイで考えるとマイナスだ。そういう結論で、愛された記憶と憎しみの両方を抱いてもいいじゃないか。私は両親に感謝している以上に「もう迷惑はごめんだ」と思っている。

 

もしこれをご覧になっている方が同じように親へ苦しんでいるなら「プラマイ」で考えたっていいんじゃないか。

そしてもし合計がマイナスなら距離を置いたっていいし、怖いなら遠くへ逃げてもいい。あなたの人生はあなたのものだ。あなたは自分で立てる。あとは息を吸って、走れ。

 

 

***

 

この記事を書く動機は『ど根性ガエルの娘』を読んだから。すさまじい話でした。一部無料掲載されていますので『ヤングアニマルDensi』1話と15話だけでも読んでみてください。毒親を持っている方はフラッシュバックに注意。

 

1巻はこちら。最初はほんわかしているので読みやすい。

ど根性ガエルの娘 1 (ヤングアニマルコミックス)

ど根性ガエルの娘 1 (ヤングアニマルコミックス)

 

 

ここまで読んだ後で、このインタビューを読むとさらに胸が重くなる。重くなるのはいいことだ。胸が重くなるのは『ど根性ガエルの娘』が強い作品という証だから。

r.gnavi.co.jp

「結婚はまだ?」親戚ハラスメントを解毒する武器を用意しました

女性の生き方 ライフスタイル 時事ネタ

年末年始の帰省が嫌だ、という人はどれくらいいるだろう。それぞれの親族は好きでも、一同に集まるのはちょっと辛い。共通の話題は「最近あったこと」くらいしかなく、場をもたせるのに苦労する。

 

親族の一部には「結婚はまだなの」「子どもは?」と彼らの世代では当たり前だった人生を押し付けてくる人もいる。今期のドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』でも見せて、

「私達の周りにはたくさんの呪いがある。あなたが感じているのもその一つ。自分に呪いをかけないで」

と百合ちゃんばりに返したいものだが、現実の私たちって何て無力なのか。むしろ自分がアウトコースにいるんじゃないか? 25歳で結婚して子供をポンポンと3人産んだ従姉妹を見ながら自分が嫌いになる。だから、帰省はユウウツだ。

 

と、思わせないためにここからの文章を書く。帰省の前に読んで、あらかじめ自分を解毒しておけるように。少しでも勇気が湧くように。

 

親戚から飛んでくる呪詛と解呪の言葉8つ

まずは、よくある親戚ハラスメント私が一つずつぶった切る。毒など恐れるに足らず。汚物は消毒だ~!

 

ハラスメント1「もういい年なんだから結婚したら」

あなたは結婚してもいいし、しなくてもいい。そもそも「いい年」って何だろう。平均初婚年齢は1993年から2011年で3歳くらい上がったし、独身女性の6割は彼氏がいない。結婚するのが当たり前の時代は終わっている。むしろ恋愛感情を誰かへ抱いたり、告白して付き合うことは一部の人が経験するイベント。

 

ハラスメント2「あんたの介護は誰がしてくれるの」

と、先々を心配する声が挙がっても心配しなくていい。どうせ結婚しても大抵は男性が先に死ぬ。介護するのはこっちの方だ。あなたの介護は子供の仕事? でも、子どもがいたところで介護を期待する時代でもない。現に私たちが親や祖父母を老人ホームへ預けているし、その方がお互いに楽だと知っている。

これからは独身が老後を一緒に過ごすためのシェアハウスやおひとりさま向け高齢者マンションなど新しい世代へ対応したサービスが生まれていくだろう。適当に検索しただけで、1つ見つけた。これからもっと増えていくだろうし、氷河期世代に合わせた安価なプランも増えるはずだ。ニーズがあるところには、市場が生まれるんだから。

 

ハラスメント3「子どもを産める年齢は限られてるんだから」

というのは事実だけれど、子供を産むかどうかはあなたが決めていい。結婚して産まなくちゃいけない法律はない。昔は結婚している夫婦と、そうでない夫婦の間に生まれた子で財産分与が違ったけれど今はそうじゃない

だいたい、若いから産めるかどうかなんて分からない。20代の5人に1人は「やせすぎ」で妊娠力の低下が懸念されている。結婚して産めなかったら、その夫婦は失格だとあなたは思うだろうか? そんなことより2人の愛が大事、とあなたは信じられる人だと思う。だったら、産むために結婚する理由はない。

実子にこだわらないなら養子縁組を考えてもいい。さまざまな背景から、生みの親と暮らせない子どもが約4万人もいる。どんな子でもあなたの影響を受けるから、きっと素敵な子になるだろう。だって、親戚のいうがままにならないあなたは、自立した素敵な人なんだから。

 

ハラスメント4「この年になったら、孫の顔を見せるもんだ」

まず、孫を一番期待しているはずの親はあなたが不幸せな結婚と子育てをするより、楽しい独身でいてくれた方がなんだかんだ幸せである。だからあなたの幸せを最優先にしても罪悪感を抱くことはない。これまで人生相談を数百人からいただいた私の経験からして、不幸な結婚をしている我が子を抱えた親御さんの方がよほど辛そうだ。あなたが今幸せならそれが親孝行である。

それに、唯々諾々と結婚して子供も産まれたとしよう。我が子に「何で僕・私を産んだの?」と訊かれて「親に子作りしろって言われたから」って答えられるだろうか。そんな「門限までに帰りなさい」と躾られたのと同じように、他人の人生を生み出していいのか。できれば「きっと素敵な子が生まれてくれると思ったからだよ」と、語ってあげたくない?

愛がなければ結婚しちゃいけないわけでもない。それこそ、相互利益も換算して結婚するのは大いにありだと思う。けれど「あなたは愛されている子だよ」というメッセージを与えられる自信が生まれてからでもいい。

 

ハラスメント5「嫁をもらって養うのが甲斐性だろう」

特に男性はこう言われるかもしれないけれど、今は共働き世代が専業主婦よりずっと多い。親世代では専業主婦が多かったから彼らにとっての「当たり前」かもしれない。でも、それは今の当たり前じゃない。

あなたが家事の得意な男性なら、仕事が好きな女性と結婚して主夫になってもいい。女性だからって養われる方が偉いこともないし、逆に専業主婦が劣っているわけでもない。得意なことを活かせば、もっと多くの人が幸せになれる。

 

ハラスメント6「女なんだから家事くらいできないと」

今どき全ての人類は最低限の家事くらいできたほうがいい。が、それもアウトソーシングできる時代だ。私は過去に何度も家事代行へ助けられている。もしあなたが家事を好きじゃなくて、代行依頼するだけで人生が幸せになるならそれが一番。だって、あなたの人生は他の誰よりもまずあなたが幸せになるためにあるんだから。何なら、年末年始の片づけだって代行を呼べば誰も皿洗いしなくて済む。今のうちに提案しておくのはどうだろう?

 

ハラスメント7「男なんだから酒くらい飲め」

アルハラに厳しくなった現代でも、プライベートの集まりでは急にこんなことを言いだす人間がいる。アルコールの許容量は人によって違うし、酒で仕事が決まる一部の職業に就かなければあなたの能力とは何も関係ない。あなたが飲まないことで同じく飲めない親戚が助かるかもしれないし、逆に飲める女性はほっとして「じゃあ、私がもう一杯いっちゃおうかな」と思えるだろう。飲まないあなたにも価値がある。

 

ハラスメント8「女の子がそんなに仕事しなくても」

そんなに仕事をしないと生きられぬ経済状況にしたのはどの世代だっけ? という嫌味はさておき、男女問わず仕事さえできれば出世できる企業も少しずつ増えてきた。いつか家庭を理由に出世コースを降りるかもしれないが、そんな心配は実際にぶつかってからすればいい。仕事が楽しくて出世したいなら、支えてくれそうな彼を扶養に入れたっていい。そしてもちろん、家庭に入りたい男女もそう願っていい。

 

呪いの言葉へ傷つかず切り返す解呪の言葉

と、道理は判ってるけど傷つくんだよね……。という現実に対抗するためにも、どう切り返せばよいかもお伝えしたい。

 

「〇〇さんのときはそんな感じだったんですか?」

たとえば叔母さんに「いい年なんだから、そろそろ結婚話とかないの?」と言われたらすかさず、「叔母さんのときはそんな感じだったんですか?」と返してみよう。

人は基本的に、他人の話を聴くより自分の話をする方が好きだ。だからこう突っ込めば延々と過去のデートや結婚式の話を引き出せるだろう。バブル時代の結婚式なんてアラサー世代からすれば純粋なエンターテインメントとして聞ける。ちなみに私の叔母はゴンドラに乗ってスモークと共に登場したらしい。すごい。

 

まずは結婚式あたりの話を聞いて、次に苦労話を聞いてみよう。「でも大変だったこともあるんじゃないですか?」と。

「そうそう、あの人ったら新婚旅行で英語がろくにできないくせにウエイターへ気取っちゃってね」「おいおい、よせよ」なんて話させるうちにあっという間の1時間が経過する。話好きの親戚がいるなら必殺技となるだろう。

 

ぶっ飛んだ近況報告を用意しておく

最初の一手すら相手に打たせない方法もある。ぶっ飛んだ近況報告を用意しよう。なぜ親戚がネチネチ結婚や子作りの話をしてくるかといえば、無難と彼らが勘違いしている話題がそれくらいしかないからだ。普段顔合わせをしない家族にとっては、内輪ネタくらいしか放り込める球がないのである。

だったら、相手が「はあ!?」とのけぞって、そのまま井戸端会議で「聞いてよ、この前のお年始でね」と話したくなるような近況を用意しておけばいい。

 

私の例はあまり汎用性がないけれど、前はこんな感じで伝えていた。

「アンナちゃん、最近はどう?」

「最近はナンパにはまってて、男の子にバーで声かけしてるんですけどあれはいいですね。お持ち帰りしやすくて」

後から親に叱られても「いいじゃない別に。ちょっと心配事があるくらいの方がみんな長生きするって」としれっと返していた。実際、親族は私を心配してあの手この手のアクションを起こし90代に差し掛かるいまも元気いっぱいである。

最近は親も慣れてきたのか「そろそろトラブルを仕込んでちょうだいな。最近〇〇さんが元気なくてねえ、心配事くらいあった方がよさそうよ」なんて言い出した。(蛇足だが私がナンパに批判的な文章を書くのは、自分がもともとナンパしまくっていた反省だったりする)

 

ここまで自分を貶めなくても「自転車で事故って3m空を飛んだ」とか「ノロウイルスに1年で3回かかった」みたいな話で十分場は盛り上がる。なおこういう時はおめでたい話より「やや不幸」くらいの話が一番場もちするので、今年最大のちょっと恥ずかしい苦労談を用意するといい。

 

ざっと、親戚からのハラスメントを解呪する言葉を並べてみた。クリスマスの記事でも書いたが「クリスマスにカップルはプレゼントをもらう・あげるべき」なんてルールは無くてもいいのと同じように、結婚しても・しなくてもあなたは幸せになれる。何歳に恋をしてもいいし、子どもはいてもいなくてもいい。あなたが自分で人生を決断していく限り、どんな結末も納得できるはずだから。たとえ人生で後悔することがあっても「親のせいでこうなった」と恨むことなく自分で責任を引き受けられたほうが、ずっといいんだ。

 

よい年末年始をお過ごしください。

 

***

最後に宣伝。「本当に結婚したい?それ親の言葉を内面化してない?」と婚活の考え方から詰め詰めする婚活本ができました。なお「恋愛ストラテジスト」という肩書にツッコミを入れた人間は、Twitterでミュートします。

 

 おそまつ!

 

クリスマスに4℃のアクセサリーを貰って喜ぶ女はチョロい

4℃というジュエリーがある。市場が縮小する中で着実に売上を伸ばすトップブランドであり、ハート形とピンクゴールドの組み合わせなど甘々なデザインが特徴。SweetやCanCamなど女性誌でも引っ張りだこで、結婚指輪としても人気がある。

 

その一方で、「4℃はダサい」という意見も根強い。4℃は女子高生から女子大生を主に支持を受けているブランドで、似合いそうな服は真っ白なコートやパステルカラーバッグ。アラサーのほとんどが着るのをためらう色合いだ。価格帯は2万円台がボリュームゾーンで決して安くもない。「だったら、年相応のブランドがいい」という気持ちはわかる。

年齢層を無視しても、4℃が背負う王道イメージも私のような日陰者にはずしんとくる。デザインモチーフはハート型、ピンク、ディズニー。ううっ、胃もたれする。年末年始の繁忙期を『日曜日よりの使者』を流して乗り切っている痛いアラサーに何てことするんだ。4℃が悪いんじゃない。こっちの感性が悪いんだ……。

 

4℃はクリスマスプレゼントでよく登場する。

 

ほとんどの男性はジュエリーブランドに詳しくない。若いうちから女性のジュエリーに詳しかったら業界人かよほどの遊び人だろう。だからクリスマスプレゼントに困る。「彼女 プレゼント」で検索するとネックレスやリングなど貴金属がお勧めに出てくる。検索1位で出てくるサイトのお勧めはティファニーオープンハートか、4℃のハートモチーフティファニーの方が高いし、どっちも王道なら4℃かな……。と、直前になって男性は慌てて店へ駆け込む。相手が4℃やティファニーが好きで選んだのでもない限りは、プレゼントしたら彼女の笑顔がどうも引きつっている……という顛末になる。

 

「貰いものに文句を言うなんて」という層もいるだろうが、彼氏からのプレゼントはおいそれと捨てたりできないからしんどい。次回のデートにはつけないと気まずいし、さりとて合わせる服もない。いっそ白いワンピース、買うか…? ムリムリ。彼の検索結果を恨むしかあるまい。

 

何歳になっても4℃で心から喜べる女性はチョロい。王道ファッションを好むと分かっているからだ。リッツ・カールトン、ディズニーランド、パリ旅行と喜びそうなものが想像できる。従って男性がプレゼントを考える時間も少なくてすむ。どれもお金さえ払えば手に入るから、彼女の笑顔をたやすく手に入れられる。

 

その点、王道でない私のような人間のなんと面倒なことか。4℃が嫌なのは「この年だからヴァンクリがいい♡」とかそういうことじゃなくって、自分の好みを元に熟考してほしいからだ。今年なら私は手間暇かけた料理かシリアへの寄付をしてくれたら嬉しい。そういうねじくれた願望には「王道プレゼントをくれる君は、私のことを本当に考えて選んでくれたのか」という答えのない問いが待っている。彼にとってみれば、プレゼントを慎重に選ぶ苦痛が毎年続く。去年あげたものと同じものでは済まないからだ。

王道を好む女性は「浅はか」「チョロい」というそしりと引き換えに、男性の思考コストを大幅に削減しているのである。クリスマス1日前に駆け込んだ店で手に入る愛情を喜んでくれる。それはなんと大らかな性格なんだろう。こっちは何てワガママなんだろう。

 

だから4℃を喜ぶ女性を馬鹿にして「私は違いが分かる女だから」なんて振るまえやしない。それは4℃という優れたブランドを踏み台にして自分をお高く見せようとする、別の呪いに過ぎないのだから。ディズニーなんて絶対行けない、ピンクのハートなんて耐えられない。そんな自分を相手にしてくれるパートナー候補の数は絶対に4℃を喜ぶ王道女子より少ない。わかっちゃいるけどmiu miu♡Tiffany♡になるのはムリだなあ……そもそもがはてなブログを選ぶ女なんだからさ。

 

もしあなたが私と同じように4℃で喜べないなら誇りも抱いてほしい。単なるアンチ王道になって「私は違いがわかる女だから4℃は選ばないのよ」なんてつまらない態度になるのはもったいない。どのブランドにも駄作や傑作はあり、4℃もその例外ではない。

けれど「ああ、これじゃなくていいかな」と思うあなたを含めた複数の価値観がこの世にあれば、多様性が生まれる。価値観が一つしかない社会では「絶対開成から東大へ入るのよ」なんてベクトルが一直線のママが生まれてしまう。価値観は1種類ではない。子どもが4℃を好きになろうが自作のネイティブアメリカン衣装を着ようが、「いいじゃん」と言える度量は多様性から生まれる。

将来子どもが彼氏に4℃を貰ったら「いい彼氏じゃないの、大事にしなさいよ」と言ってあげられるように、同じくらい自分の価値観も大事にしていい。どちらが優れているわけでも、劣っているわけでもない。

 

ただ、もし王道プレゼントやもっと言えばプレゼントをもらうこと自体も苦手なら自分が王道女子のように大らかな女ではないと自覚しておきたいし、そんな人間がクリスマスプレゼントを欲しがるなら「これ買って」と指定すべきだろう。ややこしい好みなのにプレゼントはサプライズがいいなんて、モノを貰うプロセスだけ王道サプライズにあこがれてしまうのは都合がよすぎる。

かつては私も「クリスマスに欲しいものを自分から言うなんて、せびっているようで失礼なんじゃ」と思っていた。その結果サプライズでもらったのは高さ1mほどあるサルの置物、自作の小説、私のために作られた曲たちだ。ハッキリ言って、4℃貰ったほうがマシだった……。そう思うくらいなら自分でブツを指定すべきである。男へ女向けブランドの知識を与えることなくサプライズに甘えるな。

 

お互いに同じくらいの予算で前からほしかったものを交換したいと言えば、王道女子がターゲットの人間も納得してくれる。4℃を喜べるなら、自分の大らかさに自信を持って。4℃を喜べないなら、チョロくない女として誇りを持とう。優劣を付ければ、そこに単なる「王道への僻み」が生まれてしまうから。そして自分が面倒な側に立つのなら、クリスマスは本当にギフトを贈り合うべきなのか?サプライズである必要はあるのか?と、根底から面倒な疑問を呈しようじゃないか。

 

メリー、クリスマス。

 

***

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ジョジョの奇妙な冒険 ヴェネチア聖地巡礼の旅(2部・5部・岸部露伴は動かない)

マンガ・本

「イギリスへ行くまえに、これ読んでください」と友人が貸してくれたジョジョの奇妙な冒険。あっという間に6部まで全巻読破してしまいました。

さて11月、グルメ仲間数名と北イタリアを横断しつつレストランを巡る旅をしました。今回はその旅程にヴェネチアがあったのでジョジョの聖地じゃん」とせっかくだから巡礼してみたレポです。見出しに巻数を記載しますので、コミックスを開きつつどうぞ。ただしネタバレ注意。

 

※これ以降、引用文献の出典はすべて『ジョジョの奇妙な冒険』から

波紋教師リサリサ(8巻)

ジョジョとイタリアといえば、真っ先に5部「黄金の風」が思い浮かぶはず。ですが実は2部「戦闘潮流」がヴェネチア初シーン。ジョセフ・ジョースターが師匠となるリサリサへ会いにきます。

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ジョセフ:ぬあんだァ~~~~~!このヴェネチアって所は観光都市じゃねえのか?

修行するっていうから おれは てっきり 山奥かどこかに こもるのかと思いきや…こんなところに波紋の「師匠」なんかいるのか――ッ

 

ゴンドラを頼み、リサリサのところへ向かうジョジョ一行。市内はゴンドラ以外にヴァポレットという水上バスがあり、普通の人はこっちを使います。ゴンドラは観光で風情を味わいたい方向けに出ており、40分で80ユーロとかなり高いからです。さすが金持ち、移動手段がセレブだった。

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ジョジョがセレブなゴンドラを選ばなかったら、船頭に扮していたリサリサにも出会えなかったので予定調和。

 リサリサ:波紋で水をはじき 水面に立つことぐらいは できるのか…………

 なお、この後ジョセフが修行した「エア・サプレーナ島」は聖地巡礼した先人によると実在しないようです。

 

せっかくだからジョセフ初登場のリアルト橋に登ります。

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オシャンな外側と比べて、中はショッピングモールのようになっておりかなり騒がしいです。一部工事中。

 

さて、リアルト橋が有名なのは橋の上から見える景色。

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絵画のように美しいです。これが撮影できる場は激混み。スリもいるようなので、撮影する際はチームで交代制にして互いのカバンを見張るべし。

 

リサリサ様へ絡むスリの男(8巻)

同じ8巻で、リサリサがカフェにいると男がナンパを装いエイジャの赤石をかすめ取ろうとします。その舞台となったサンマルコ広場がこちら。ジョセフが絡んできたスリにからしをてんこ盛りにしていました。

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一見何でもない広場かのようですが、

 

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めちゃくちゃデカいです。

 

リサリサ:気が付いたようね…そう……これが「エイジャの赤石」!!

 

こちらが聖堂の拡大図。ディテールまで極端に美しい。中世に生まれてこんなの見たら、そりゃキリストを信じますわ。

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この広場は昼間になるとハトと観光客でごった返してまともに撮影できないので、朝7時ごろに撮影するのがおススメ。というのも、空いているこの広場からはとんでもないものが見えるからです。

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この広場から海方面へ一直線に見えるのは……ジョジョ5部でブチャラティがボスと戦ったサン・ジョルジョ・マジョーレ教会!

2部と5部の舞台は、かなり近いことがわかります。徒歩と水上バスを含めて20分くらいの距離。ここでは、実際に対岸から360°回転して映像を撮影してみました。

 


ジョジョ5部 ブチャラティ vs ボスの島

 

この日は曇っていたので、5部の撮影はまた後日に回しました。

 

ギアッチョ with ホワイト・アルバムとの決戦(55巻)

話は5部へ移り、ジョルノ・ジョバァーナの世代へ。ジョルノはギャング組織で成り上がるため、幹部ブチャラティと共にボスの娘・トリッシュを守ることに。ところがヴェネチアへ向かう路上で暗殺組織に襲われます。 

 

ここでヴェネツィアジョジョ目的で訪れるなら、外せない台詞がこちら。

ギアッチョ:フランスの「パリ」ってよォ……英語では「パリス(PARIS)」っていうんだが、みんなはフランス語どおり「パリ」って発音して呼ぶ。

でも「ヴェネツィア」はみんな「ベニス」って英語で呼ぶんだよォ~~~。「ベニスの商人」とか「ベニスに死す」とかよォーー。なんで「ヴェネツィアに死す」ってタイトルじゃあねえーんだよォオオォオオオーーッ。

 というわけで、ありとあらゆるジョジョ聖地巡礼ブログは「ヴェネツィア」で統一されています。愛を感じる。

 

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 ギアッチョ戦の場所を訪れるためには空港から楽な水上バスでの移動を選ばず、わざわざバスで不便な乗り継ぎをする必要があります。よほどジョジョ好きでない限り、このルートを選ぶことはオススメしません。撮影してみましたが、ご覧の通りただの道路です。

 

この後ライオン像を破壊してDISCをゲットするシーンですが、全く同じライオン像は実在しないとのこと。しかし翼の生えたライオンはヴェネツィア守護聖人である聖マルコの象徴なため、そこかしこで見ることができます。

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たとえばサン・マルコ広場付近にあるこの像とか。

 

ブチャラティ vs ボス戦(56巻)

ブチャラティがボスの真意を知ってしまい、戦いの決断を下すサン・ジョルジョ・マジョーレ教会。今回の旅のハイライトです!

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上陸だー!!!

 

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正面から確認しただけでは「ボス、どっからブチャラティが来るって見えてたんだ?」と疑問に思いますが、裏側に尖塔があってそこから360°展望できることを確認。尖塔へは教会内部からしか行けないようなので早速足を進めます。

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こちらが教会内部。ブチャラティの戦闘を思い出すと、胸が締め付けられます。ほの暗い屋内は、思いのほか人がいません。ジョジョファン以外はわざわざこの教会のために訪れないのでしょうか。

 

ふと、前方に光る物体を見つけました。

 

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手のオブジェです。こちら、アート作品で2016年末までかざる予定とのことです。ジョジョ読者には傷ついたトリッシュの手にしか見えない……。

 

ナランチャトリッシュは……信じる人に見捨てられた………オレも昔……(中略)ブチャラティィィィィィィィィィ 行くよッ! オレも行くッ! 行くんだよォ---ッ!

 

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こちらは教会の奥にある、ブチャラティスティッキィ・フィンガーズで辛くも逃げ延びたと思われる部屋。

 

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偶然あったこの像は、悲劇を嘆いているようにすら見えます。マンガでは地下から1階へ移動したけれど、本物の教会には地下階がないか非公開です。

 

このあと、さらに建物奥の尖塔をエレベーターで昇ります。

ボスが見ていた景色、それは

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黄金の風……!

 

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確かに感じる、黄金の風。「逆光は勝利」って鳥坂先輩がおっしゃるだけありました。(※別の漫画ネタです)サン・ジョルジョ・マジョーレ教会へはぜひ日暮れの1時間前にお越しください。May the Golden Wind be with You.

 

ところで、この旅でとんでもないことに気付きました。ヴェネツィアの海は花京院を思い起こさせるエメラルド色をしています。ジョジョのカラー版を読み返すと、この色が完璧に再現されているのです。

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こちらがさまざまな海とジョジョのカラー版を比較した画像。カラー版は荒木飛呂彦先生が塗っていないにもかかわらずこの再現度。驚愕です。もちろん時刻や天気で海の色は変わりますが、ここはロマンで押し通させてくれ。

 

岸部露伴は動かない(番外編)

さて、ジョジョ本編以外で最後に訪れたいのが、「岸部露伴は動かない」に登場した懺悔室。こちらの舞台となった「サンティ・ジョヴァンニ・エ・パオロ教会」です。

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作中で岸部露伴が『禁止なのに教会で写真撮りました』って告白でもしようと考えているとおり内部が撮影できません。が、みなさんガン無視で撮影していました

 

内部で気になったのが、懺悔室の構造。実際の漫画と全然違う形をしています。そもそも「岸部露伴は動かない」の懺悔室だと、格子が大きすぎて懺悔してる人の顔が見えちゃうじゃないのとか、思い返せばツッコミどころがあります。あれは荒木先生のオリジナルだったわけですね。

懺悔室の周りは教会に貢献した人のお墓が壁や地面に埋め込まれており、確かにいつ亡霊が出てもおかしくなさそうな雰囲気でした。

 

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こちらが教会の向かい側。いちいち街並みが絶景になるのがヴェネツィアの怖いところです。

 

これから旅行される方へ

ここまで、ヴェネツィアジョジョの奇妙な冒険聖地巡礼の旅でした。ここからは実際に旅行される方向けの情報です。

 

まずヴェネツィアの宿は全体的に高いです。聖地巡礼のロケーションから考えるとベストなのはホテル・ダニエリ(リンク先音量注意)ですがあまりに高いのでジョースター一族と同じくらい裕福な方向け。

ヴェネツィア本島でもサンタ・ルチア駅付近なら安く抑えられます。上述のレアルト橋付近も安いのですが、ちょっと小道に入ると立ちションが多く、清潔さの観点から個人的にはオススメできません。

そしてイタリア全般のホテルに言えますが、なぜか歯ブラシがありません。高級ホテルへ泊まられる方も歯ブラシと歯磨き粉だけはお忘れなきよう。

 

交通手段はヴァポレットと呼ばれる水上バス(船)がかなりの頻度で走っているためまず困りません。〇〇時間有効券を買えばSuicaと同じくタッチ&ゴーですが、かなり費用がお高いです。観光地なので堪えてください。30歳未満は割引があるそうです。

 

ヴェネツィアの食事ですが、観光地の宿命かイタリアにしては珍しくマズめです。現地人に話しかけて教えてもらったイチオシレストランでも、ちょっと微妙な感じ。もしグルメ旅行を期待されるのであれば近隣都市・ボローニャへどうぞ。ボロネーゼパスタや、モルタデッラという大きいソーセージが大変美味しいです。

 

とはいえジョジョ読者なら、作中で勧められたイカスミパスタは食べたいはず……。一番信頼できそうな無料の情報ソースはGoogle mapの口コミです。そこで評価がいいところへどうぞ。私はOsteria Oliva Neraへ行きましたが、ここのイカスミも悪くなかったです。

また、朝7時からサン・マルコ広場を撮影するには相当早めに朝食をとる必要があります。唯一近辺で開いていたのがAl Verde Coffee and Barカプチーノとクロワッサンで3ユーロと大変お得ですが、愛想は悪いです。人件費の分しかスマイルはもらえないので、そこは仕方ない。ちなみにイカスミはイタリア語で sepia(セピア)です。ってことはセピア色の風景って、イカスミ色だったんかーい!

 

イカスミのスパゲッティは Spaghetti al nero di seppiaで通じます。スパゲッティ・アル・ネッロ・ディ・セッピア。

 

もっとグルメに気合を入れたい方へは、イタリア発のレビュー本『ガンベロ・ロッソ』の購入をおすすめします(イタリア語ですので、Google翻訳でカメラかざしながらどうぞ)

Ristoranti d'Italia 2016

Ristoranti d'Italia 2016

 

 

それでは、ジョジョの奇妙な冒険聖地巡礼ヴェネツィアのレポを終わります。アリーヴェデルチ

 

 

ジョジョの奇妙な冒険 (1) (ジャンプ・コミックス)

ジョジョの奇妙な冒険 (1) (ジャンプ・コミックス)

 

 

岸辺露伴は動かない (ジャンプコミックス)

岸辺露伴は動かない (ジャンプコミックス)

 

 

電通に入るようなエリート層は「降りたら死ぬ」ゲームを生きている

ライフスタイル 女性の生き方 キャリア 学歴・職歴

電通で入社わずか1年目の女性が過労死させられた事件。亡くなったのは共通の知人が何人もいる女性だった。今さら強制調査をしたって、彼女は返ってこない。

 

なぜ就活で電通が人気なのか

就活における「電通」の立ち位置は間違いなくトップである。内定者の数割はコネ入社で枠がそもそも埋まっているから、一般枠で内定するのは至難のわざ。ここでいうコネとはスポンサー企業の御曹司レベルを指すので、生まれ直さないと手に入らない。東大でも内定が難しいと言われるゆえんだ。

その一方で電通はハードな接待や残業、体育会系の社風で学生にも知られている。が、私が電通社員から実際に聞いた接待の様子を話しても「本当にそんなことあるんですか」と信じられない学生の方が多い。個人情報がバレてしまうのでフェイクを混ぜるが「アナルに栄養ドリンクの瓶を突っ込むくらいは女性でもやらされる」(20代、元電通社員)とか。もっとも、この辺はクライアント次第かもしれない。私がクライアント企業側だったときはこういった体罰的宴会芸はなかったが、コスプレで踊る・酒瓶一気飲みなど接待は文化祭のノリだった。

残業時間も具体的な数値は伏せる。だから学生にとって「毎日4時まで眠れない会社がある」と言われてもいまいち信じられない。

 

 

ではなぜトップ学生が電通のような会社へ入社した後、現実とのギャップへ気付いても辞められないのか。そこには2つの理由がある。

 

成功体験に裏打ちされた将来は明るく見える

まず、自分たちはこれまでハードワークをこなしてきた自負があること。東大に入るような学生は、1日10時間の勉強をものともしない努力家である。東大は入学後も「進振り」といって卒業学部を選ぶ選抜があるから遊びほうけてはいられない。

そしてトップ企業を狙いたければ体育会系部活動の経歴が必要だ。企業によっては「東京大学の〇〇部」と部活単位で採用枠が用意されるくらいである。もし所属していないなら「理不尽なことにも耐えられる」「体力がある」エピソードを別途用意せねばならない。なにせこの2つがないと入社後に潰れてしまう。

さらに広告代理店であれば創造性が求められる。例えば電通出身者であるはあちゅうさんは、学生時代に企業からスポンサーを自力で勝ち取ってタダで世界一周した。全国約50万人と言われる大学生でもこんな取り組みを思いつき、さらに実行できる人はそういないだろう。

何よりクリエイティブなのに企業からスポンサーを得るという社会性が感じられるのが高評価だったんだろうな、と数社で採用活動に携わってから思った。単に面白いだけの社会性が無い人は入社してもセクハラ・パワハラを生き抜けないからだ。

 

賢さ・体力・創造性――1つもっているだけで「すごい」と思われる要素を3つ揃えて初めて内定できるのが電通である。それまでの果てしない努力から学生は成功体験をいくつも持っている。誰しもサイコロを振って10回6が出たら、11回目も6が出ると思うんじゃないだろうか。だからそれ以降、自分が会社で鬱になる展開は想像できない。

 

「エリート街道を降りたら負け」というトップ層の価値観

さらに、ここまで成功してきた人は死にもの狂いで頑張ってきたからこそ「ゲームを降りる」ことができない。これまで10倍、100倍の難関を潜り抜けたのだ。今さら普通に過ごしてきた人たちのような暮らしを選ぶことは、努力をフイにするのと同じ。降りることは社会的な死を意味する。

もちろん毎年、トップ企業へ内定した学生も一定数が退職する。その理由はさまざまで、決してゲームの勝ち負けで単純に判断できるようなものではない。けれども残った側から見れば、彼らが敗者に見えることも少なくない。かつて私は電通と同じくらい激務の企業にいたが、退職後に競合他社の知人とこんな会話をしたことがある。

 

私: 離職率も高い中でサバイブしてるAちゃんはすごいと思うよ。女性でもバンバン海外転勤あるし、しかも結婚適齢期だから難しい人も多い中で。そろそろ昇進する時期でしょ? 


Aちゃん: そんなことないよ、目の前のタスクを一生懸命片づけて気づけばここにいたって感じ。それに、辞めるような人はどうせ生き残れなかった人でしょ。気付いてると思うけど、結局辞めるような人って大したことないし。ほら、〇〇ちゃんやXX君は知ってるでしょ? 確か起業するとか進学するからって言って辞めたけど、結局は成果を出せない人間だから辞めるんだよ。だって辞めずに起業もできるし、休職すればMBAも取れるでしょ。

 

私: (おいおい、私も業界を辞めた側なのによく目の前でそれ言うな……)なるほどね。たとえば激務だったりうちの業界みたいにパワハラ・セクハラがある業界だと能力関係なく会社が嫌になって辞める人もいると思うんだけど、それについてはどう思う?

 

Aちゃん: 一定数はいると思うよ。本当に優秀でも辞める人。でも優秀さって単なるビジネススキルじゃなくて、女性であることを売りにできるとか、そこも使ってのし上がることを指すじゃない。それができない時点で二流だし、そんなことに絶望するなら何で弊社に来たの? って思う。

 

私: (絶句)……その生き方が好きならいいと思うけど、でもそれって楽しいのかな……幸せなのかな。

 

Aちゃん: 幸せは人によるけど……少なくとも私は幸せだよ。裁量権も大きいから若手なのにどんどん任せてもらえるし。誰でも知ってる会社で頑張っているっていう名声も手に入るし。それって、やっぱり私たちみたいに努力して勝ち抜いた人の特権だと思う。

 

今回の過労死でも「同じ状況なら自分も死ぬかもしれない」と教えてくれた人が何人もいた。自分たちも同じように生きるか死ぬかのゲームを走っている。辞めた人を表だって負け犬と呼ぶ人間は少ないだろうが、裏でどう思われるかは判っている

 

逆に、鬱だろうが左遷コースだろうが、外から見ればその人は変わらずエリートだ。合コンでちやほやしてもらえる、周りから「あの〇〇に勤めてる人だよ」と言ってもらえる。両親から誇りに思われる。恩師が、先輩が……。ゲームから降りると、これまで応援してくれた彼らを裏切ることになるんじゃないか。そんな罪悪感もよぎる。

 私も自分が親族の介護を理由に新卒企業を退職するとき、この会社に入るまで助けてくれた人の顔が次々とよぎった。優しかった最初の上司に申し訳なく思った。それでもこの会社の働き方はおかしい、毎日終電で帰ってから家で仕事するなんて。

 

きっと労働環境だけでも変えられる。そう思って労働基準局へ相談した。

正義を全うしたいなら訴えてもいいですけど……労力に見合う賠償も得られないでしょうから、おすすめしません。

あなたが訴えることで前職で仲のいい方へ報復人事があるかもしれません。発覚すれば是正できますが、たいていはグレーゾーンの左遷をされます……。それに、スポンサー企業だからマスメディアも取り上げないでしょう。それでもやる覚悟があったらご協力できます。

受話器を置いた。クソ野郎で結構。私は何もしなかった。

 

幸せな電通社員は上司に守られている

もちろん、幸せに電通で働いている方も大勢いる。ある30代の電通社員から聞いたのは「クライアント企業の接待は理不尽の塊だけど、上司や同僚が守ってくれる」という言葉だった。

電通社員はクライアントから理不尽な目に遭い続ける。私が電通社員へかつてヒアリングしたエピソードには「今すぐXXへ来いと言われ東京から深夜タクシーに飛び乗った」「道端で脱げと言われて脱いだら留置場へ入った。すぐ出してもらえたのでそのまま出社した」なんてのがある。

上記のアナルといいエクストリームなパワハラ・セクハラは一部のクライアントに限られるだろうが、「明日までにこの映像を修正して納品してください。寝なければできますよね。この企画が成功したら10億単位で追加予算出ますから」なんて目の前に人参をぶら下げた地獄労働はよく聞くし、私も依頼したことがある。その後、同じように低予算で何度もギリギリの納期で依頼せざるを得なかったことも。

ムチャクチャな要求に答えられる馬力こそ電通が他者に勝る最大の理由であり、一部のゴリゴリ日系企業は大手でもそういう接待を要求する。電通がクライアントからのパワハラ・セクハラを拒絶すれば戦略立案に優れる博報堂に追いつかれてしまうかもしれない。

 だから外部からのストレスは避けられないのだが、そこで社員を守るのが上司や同僚だ。「ほんと、あの社長最低だな!」と社内で一緒に分かち合えるから明日も戦えるのだ。過労死した女性のツイッター履歴には、上司が守るどころかパワハラ・セクハラの加害者になっていたことがわかる。

 

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※ご本人のツイートより。故人となったのちに鍵がかけられたため匿名化した。

 

守ってくれるべき周囲の人間も加害者だった。だからこそ彼女も最後の一歩を進んでしまったのかもしれない。

 

どんな努力も「幸せのため」にある

確かに、トップ大学へ進学すること、就職することはエリート街道の条件だ。そこには並みならぬ努力がある。だが全ての努力は自分が幸せになるためにある。真面目に頑張れる人ほど、周りから「頑張ったね」と言ってもらうことで幸せを感じがちだ。しかし周囲が反対してでも得たい幸せを見つけられれば、ブラック企業に使い倒されることもない。あなたの退職を笑うような人間とは別の生き方を選べる。

 

「人が笑ってもこの道を選ぶ私を 応援してくれる人だけ友と呼ぼう」といった主旨で宇多田ヒカルが歌っていた。世間が求めるゲームに乗っかるのは楽だ。けれどそこにもし自分の幸せがないなら、自分の幸せを認めてくれる人だけを友達と呼べばいい。馬鹿にする人から去っていい。あなたの人生では、あなたが世界で1番大切な人だから。

 

この記事が消えないことを願う。

 

追記:

アナルに栄養ドリンクの瓶~のくだりは、前述のとおりフェイクが入っています。が、下腹部に何を突っ込まされたところで異常事態なのは間違いありません。それは仕事ではなく拷問です。

この記事が公になってから、似たような事例の情報がありました。電通だけではない、他業種でも似た接待があるとのツイートも。

 

 

これは10年前の話ではなく、2016年です。「私の周りにはなかった」のかもしれませんが、どこかの部署にはあるのです。やりがいや裁量権に踊らされて、不幸な仕事に就く人が少しでも減りますように。

 

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電通で不正が発覚したデジタル部門。亡くなった彼女も近しい部署、もしくは同じ部署だった。そのハードさはクライアントから見ても「ごめん」と思うほどではあったんですよ、というお話。

toianna.hatenablog.com

 

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