トイアンナのぐだぐだ

まじめにふまじめ

Netflixのドラマ『フォロワーズ』は、アラフィフにとっては名作なのかもしれない

Netflixの作品『フォロワーズ(FOLLOWERS)』が20~30代女性から批判されまくっている。

 

『フォロワーズ』は絢爛豪華な作風で知られる蜷川実花様の監督作品。それもテーマは女性のキャリアと幸せ。アツい。

作中では、フォトグラファーの中谷美紀様が抱える「私のキャリア、これでいいんだろうか」という孤独や、SNSで注目を浴びる人生に振り回される池田エライザ様が描かれる。全員"様"づけしたくなる制作陣。最高の高。

 

20~30代の悩みを詰め込んだようなテーマが話題騒然となり、公開とほぼ同時に見た女性が多かった。そして、多数の落胆が生まれた。

 

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Photo by Prateek Katyal on Unsplash

 

Netflixのフォロワーズは価値観が昭和に置いてけぼり

Twitterでの批判をいくつか抜粋しておく。

 

 

記事・ブログでの批判ならこの2つが読みごたえもあって丁寧。

musume-daisuki-pnd.hatenadiary.jp

toyokeizai.net

 

私も視聴したが、「脚本と演出さえ変えれば最高」という感想を得た。たとえば、主人公の中谷美紀様は冒頭、渋谷のスクランブル交差点で若いモデルを撮影している。カメラを縦と横にくるくる回しながら「いいね」と繰り返す中谷美紀様。激サムい。でも作品が悪いというよりは場所とセリフのおかしさが目立つ。

UberEatsのバイトのカッコで、モデルの仕事に向かう池田イライザ様の「やっば、オーディションに遅れる!」なんてセリフも、平成初期アニメの少女しか言いそうにない。

他にも気になるのが、中谷美紀様が弱みを話せるゲイの友達・金子ノブアキ様。そのゲイっぷりが、「ノンケ女が妄想する理想のゲイフレンド」って感じなのだ。彼はズケスケとアドバイスして、ハグしてくれて、でも有害じゃない。だってノンケの男と違って、彼女を襲ったりしないから。

 

そんなゲイへの誤った期待には、BSディムさんのご宣託が2012年時点から存在する。

 

2012年から存在するステレオタイプへの批判が、2020年でまだ解消されていないことにクラクラした方も多かろう。フォロワーズの世界には「ノンケでも、ゲイでも、人は誰でも自分の気持ちで精いっぱいだよ」という、漫画『青のフラッグ』で放たれた自由へのメッセージ性は一切ない。

 

そしてなにも、ゲイ差別だけがひどいわけでもない。女性の生きざまも、等しく差別の対象だ。主人公の中谷美紀様は「女としての幸せ」を得られなくて困っている。作中における「女としての幸せ」とはすなわち、結婚と出産と育児だ。なんと、未婚で子なしだと"女としての幸せ"は手に入らないらしい。賞を得るようなトップ・キャリアの女性でも育児は母親に頼らないのがカッコいいのだ。

さて、この定義で考えると雨宮まみ様や橋本環奈様、安室奈美恵様は"女として不幸せ"となってしまう。いくら何でも、価値観が平成すぎる。

 

と、そんなわけでフォロワーズはバチバチに批判された。仕方ない。

 

Netflixのフォロワーズは40代後半以降にウケている 

他方、フォロワーズを好きだという女性にもヒアリングしてきた。中心を占めていたのは、男女平等と戦いながら働いてきた、40代後半~50代前半の女性たちだ。彼女らにとって、中谷美紀様の悩みは「当時のリアル」だったのだろう。

働けば激務。女の幸せは手に入らない。でも、結婚しないなんて世間から許されない。だから出世して、結婚して、子を成して、それでも子供を祖父母に預けては「母親失格」と言われ、家事育児をこなし、何から何まで手に入れないと許されなかった世代。「母親・妻としての仕事をこなすなら働いてもいいよ」と夫の許可を得るのが普通だった時代。

中谷美紀様の苦悩は40代後半~50代の共感を得ることが多い。というか、監督の蜷川実花様は47歳で、主演の中谷美紀様は44歳。30代の部下が「お先、失礼しま~す」と定時に帰る裏で、この世代がさらに古い感覚の上司と戦う姿を考えれば、リアリティはぐっと上がる。そう、フォロワーズの想定視聴者は20~30代ではないのだ。

 

40代以上の視聴者獲得に注力していると思われるNetflix

そもそも、Netflixは現在「40代後半以上」をターゲットにした作品へかなりの予算をかけている。というのも、国内のサブスクリプション調査でNetflixは40代女性の3位と遅れをとっているからだ。(1位はAmazon Prime、2位はdマガジン)

もともとNetflixテレビのリモコンに"Netflix"ボタンを設置するなど、従来のテレビ視聴者を狙う戦略が目立つ。これまで地上波しか見てこなかった層へ、Netflixボタンを設置した。だが、40代後半以上が見たくなるコンテンツがなければ、契約へのフックがない。

 

そうして生まれたのが『全裸監督』と『FOLLOWERS(フォロワーズ)』ではないだろうか。他ジャンルを見ても、アニメでは『ULTRAMAN(ウルトラマン)』『攻殻機動隊』『聖闘士星矢』と、30代以下はお呼びでないことが明白だ。20~30代"も"狙っていきたい気持ちはあるだろうが、集中的に予算が投下されているのは40代後半以上に向けたコンテンツだろうと予想がつく。 

そう考えると、40代後半以上にとっては実のところ「フォロワーズが名作」と感じられており、20~30代にウケる必要なんて、全くないのかもしれない。

 

Netflixは40代以上の視聴者をフォロワーズで得られたか?

では、フォロワーズは40代後半以降のファンを獲得したのか? ここにも疑問の余地がある。

たとえばNetflixは現在「Head of Anime (アニメ部門のトップ)」を採用募集している。プライベートな事情で社員が辞めたのでもない限り、Netflix の日本支社はいまの契約者数に課題がある、と考えるのが妥当だろう。アニメを筆頭に、おそらく40代後半以降の視聴者獲得にも苦戦しているのだ。

 

そりゃそうだ。40代後半以降の女性だって「あのとき、コレ好きだったでしょ?」とトレンディ・ドラマを観たいわけじゃない。かつての青春はもう脳裏に焼き付いているから、新しく制作に2億円かけた「ねえ、セックスしよ」とか「舞い上がれ!朱雀 miracle・ラー」「都会はきらめく passion fruit」が見られたところで、契約しないだろう。欲しいのは「いま・ここで」40代後半以降の層が共感できる作品か、当時アニメ化してほしかったけれど、望み叶わなかったものたちだ。

 

私だったら『動物のお医者さん』『大奥(よしながふみ版)』『天は赤い河のほとり』『よつばと!』『ブラックジャックによろしく』あたりから提案するだろう。(実際に40代後半以上へヒアリングしたら全く好まれないかもしれないが)

最終的に、Netflixのフォロワーズが名作かどうかは、今後の40代後半以上の女性がどれくらい契約するかで明らかになるだろう。どうやらお呼びでない世代は「先輩、これもいいっすよ」と、最新の価値観を含んだ作品の布教に努めることで、ささやかに昭和・平成の価値観へ抵抗したい。

と・同時に、自分たちの価値観が最新だと思い込むことのないよう、年下のおすすめ作品を貪欲に見ていこうと思う。

 

最後に、直近でエンタメ性と社会問題の提起を兼ね備えた作品たちを全力プッシュさせていただく。

 

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クィア的に視聴できる音楽も続々増えてて最高ですね。


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トランスジェンダーを扱う『にくをはぐ』もエンタメとしての面白さがバツグンで、すばらしかった。

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