トイアンナのぐだぐだ

まじめにふまじめ

私には、恋愛相談に乗る資格がない

私は恋愛ライターなのに、恋愛相談に乗れない。

 

新卒のころ、自分は弱みを克服して強くなっていくのだと思っていた。なにしろ、同期の中で圧倒的に仕事ができなかったから。

しかも、最初から優しい上司に恵まれ、全力で支援してもらってそのザマ。同期はクセのある上司のもとについても、なおたくましく成長していく。私はオフィスで深夜に泣きながら、書類を作ってボツになるばかり。

 

いくら強みを伸ばせと言われても、基礎体力がないのに向いているスポーツなどあるものか。私はいつだって、最初の一歩で泣いていた。

 

「相談に乗れない」恋愛ライター

恋愛ライターとしても、私は失格だと思っている。原稿は誤字脱字まみれで、別に文才があるわけでもない。常に「自分史上最高」の文章を発表しつづけるライター・作家さんがまぶしい。

 

特に私は「人生相談に乗るのが苦手」だった。この分野では致命的な欠陥だ。だって、恋愛だよ? キャリアだよ? 人生相談に乗ってなんぼのフィールドじゃないか。

大先輩である川崎貴子さんや、金沢悦子さんアルテイシアさんは膨大な数の人生相談に乗っている。界隈でレベル100の瀬戸内寂聴さんなど、これまで何万人を救ってきただろうか?

相談の数だけ、先輩方の言葉には重みがある。そう思い、1000人以上の相談に乗ってきた。が、私は圧倒的に相談に乗るのがヘタだった。理由は、すぐに解決策を出したくなるクソせっかち野郎だったから。

 

人生相談には9割がた「回答のパターン」がある

 

たとえば「どうしても不倫を続けてしまうんです」と言われたら、

まずは不倫をしている自分すら肯定できる自分を育てましょう。それからでないと、不倫を止めても再発します。

それから不倫相手へ最後通牒だけ送って、音信不通になりましょう。これまでの感謝を伝えたいとか、結婚式に呼びたいとか言ってるうちは止められません。

 

不倫を止められないならそれはそれで、法的なリスクと人から恨まれる覚悟を背負い、業とともに生きるしかないでしょう。その業を含めてまずは自分を愛しましょう。やめるも進むも、すべてはそこからです。

と、たいがいは答えることになる。

 

「就活でエントリーする企業を絞れない」と言われたら、

エントリーはいくらしてもいいのが今の就活システムなんだから、多めにエントリーしてから「何か違う」と説明会などで感じたところを切っていくのが合理的。

最初から受ける会社数を絞り込んだら、全部落ちて6月に泣くのはあなただ。

と、日本の採用システムが変わるまでは100%答えることになる。

 

そこで、優れた聞き手は答えを急がない。まるで生まれて初めてそんな相談聞きました、という顔をして涙を流し、肩を抱いてから解決策を導く。

相手が自分で答えを出せるように、誘導できる方もいる。お説教は誰も聞きたくないが、自分で見つけた解決策なら、実行したくなるからだ。

 

こういったカウンセリング・コーチング的なプロセスが、共感力ゼロの私にはとてつもないストレスだった。相談に乗るだけで1日寝込むほどぐったりし、仕事が回らなくなってしまう。そんな自分が嫌になって、ますます寝込む。

 

一緒に共感できないことで、「冷たい」「裏切られた」と感じる相談者さんもかなりいらしたと思う。特に個別相談を依頼される方は思い詰めている方も多いので、後から「あの人は頼りにならない」「私を救ってくれなかった」と恨まれることも結構ある。その復讐として、私の彼氏を寝取ってやろうと、彼が襲われたこともある。

 

相談してくれる方へ「また恨まれるのではないか」という恐怖や、「もっと端的に話してほしい」と怒りを抱いたこともある。全部私の身勝手な感情だ。

 

そして私は共感する前に、スパっと解決策を言ってしまう。せっかちなのだ。それも、偉そうに。共感とは真逆のアプローチで、ただひたすらに、申し訳ない。私は人の相談に乗る資格がない。そう感じて、一時期はまったく相談を伺わなかった。

 

「できること」を探して、謝りながら生きていく

ところが、ひょんなことから打開策が生まれた。「イベントで相談に乗るのは苦痛ではなかった」のだ。

イベント会場での質疑応答は、たとえマンツーマンでも質問が短縮されやすい。相談者さんも端的に話そうとするし、早急に答えを求めるからだ。瞬発力が求められる質疑応答なら、私の得意分野だった。

 

それ以来、私は相談をイベント会場でのみ受けている。相談者さんからTwitterのDMやメールで個別相談の依頼をいただくことも多いが、知人友人以外はお断りしている。私も、相手もハッピーにならないとわかっているから。

 

「私は個別であなたの相談に乗れない・乗りたくない」とこうして言うことに、とてつもない勇気が必要だった。読者さんを裏切る行為だから。1対1だからこそ、言えることもたくさんあるだろうから。

でも、私はそれができない。カウンセリングを紹介することはできる。具体的な支援はできるけど、あなたと共に泣けない。本当に申し訳ない。

 

私は、恋愛相談にマンツーマンで乗る資格がない。せっかちすぎて、わっと相談の答えを言ってしまうかもしれない。それを「ないがしろにされた」「軽視された」と感じる方もいると思う。申し訳ない。私は、立派な聞き手ではない。

それでもできることを、やっていく。欠点の隙間にある「できること」を探しながら、そしてできないことを、謝りながら。

 

 

 文中に登場した先輩方の書籍。どれもおすすめ。

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離婚しそうな私が結婚を続けている29の理由 (幻冬舎文庫)

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